新型コロナの影響でアフリカの民間貯蓄は増加せず、先進国とは対照的

(アフリカ)

中東アフリカ課

2022年12月28日

IMF9月にサブサハラ・アフリカ(SSA)地域の民間貯蓄と新型コロナウイルス感染拡大の関係についての調査を発表した。SSA地域31か国を対象としたこの調査によると、同地域の民間貯蓄はパンデミック期間中には増加しなかったか、もしくはわずかに減少したとしている。これは同期間に民間貯蓄率が急増した他の地域、特に先進国とは対照的な結果となり、SSA地域における人道的・経済的影響が他地域よりも大きいことを表している。また、SSA地域では、1人当たりの実質可処分所得(gross private disposable income, GPDI)の増加が民間貯蓄率を押し上げる最も重要な要素であることも明らかになった。同地域では、1人当たりGPDI1ポイント上昇するごとに、民間貯蓄率が約0.45ポイント上昇している。

IMFは、SSA地域では新型コロナ感染防止のためのロックダウンを受けて、交通手段や雇用に制限が課せられた結果、貯蓄を使い果たした家庭が多いと報告している。例えば、欧州ではパンデミック期間中の消費活動の制限などにより、2020年と2021年の貯蓄率が平時の貯蓄率よりも約7ポイント増加したとする。また、同調査では、新型コロナウイルス感染症による死亡が民間貯蓄の減少につながることを明らかにした。同感染症による死者数が人口100万人当たり10人になるごとに、民間貯蓄率は平均して0.2ポイント下がっている。統計上は、新型コロナに対する防疫措置やワクチン接種率と民間貯蓄率との間に直接的な関係は見られなかったが、同感染症による死亡率を引き下げ、1人当たりGDPIの成長と民間貯蓄率の増加を図るためには、引き続きSSA地域での感染拡大対応、ワクチン接種を進めていくことが求められている。

IMFによると、SSA地域の民間貯蓄率は過去20年で上昇し、1983年には平均11.5%だったのが、2019年には平均17.3%となっていた。しかし、依然として他の新興国・途上国を下回っており、さらに、SSA地域内でも石油輸出国や中所得国と低所得国の間の民間貯蓄率には差が出ている。民間貯蓄は消費やリスク管理、教育、起業などにとって重要な要素で、経済発展に欠かせないとされる。高い債務水準や速い人口増加率などに起因するSSA地域の民間貯蓄率の低さは、同地域の開発のボトルネックとなっており、金融包摂(注)が進む中でも、人口の約46%が依然として全く貯蓄できていないとみられている。

(注)国民全員が基本的な金融サービスを受けられること。

(天神和泉)

(アフリカ)

ビジネス短信 b7db9624a6aeb111