サッカーW杯に熱狂する国民、陰の立役者という側面も
(バングラデシュ)
ダッカ発
2022年12月26日
カタールで開かれた国際サッカー連盟(FIFA)主催のワールドカップ(W杯)2022は、アルゼンチンがフランスとの激闘の末に優勝した。バングラデシュでは開催期間中、ダッカ市内の公園などにパブリックビューイングの会場が設置され、連日多くの市民が集まって盛り上がりを見せた。バングラデシュは一度もW杯出場経験がないものの、FIFAが公式SNSアカウントでその熱狂ぶりを紹介するなど、各国のメディアもバングラデシュ国民の異様な盛り上がりぶりを報道した。都市部から郊外まで、街中の至る所が出場国の国旗で彩られ、レプリカユニフォームや国旗が販売される光景も各所で見られた。特に、アルゼンチンとブラジルのファンが多いとされ、決勝戦でもアルゼンチンを応援するサポーターの姿が目立った。
バングラデシュでサッカーはクリケットに次ぐ2番目の人気を誇るスポーツとされているが、サッカーの著名な国際大会の度ごとに、ある種の一過性の盛り上がりを見せる傾向があるという。プレミアリーグという国内リーグも存在するものの、未熟な運営体制などから、まだまだ財政的に弱いクラブが多い状況とも言われている(「デーリー・スター」紙2月18日)。同国の1人当たりGDPは2,723ドル〔2021/2022年度(2021年7月~2022年6月)、暫定値〕で、企業が旺盛な個人消費市場を対象としたビジネス展開を検討する際、今回のW杯の熱狂に代表されるスポーツビジネスの観点や文化的特徴も、重要な要素となる可能性がある。
一方で、今回のW杯開催に当たっては、バングラデシュは陰の立役者という側面も持つ。人権問題が取り沙汰されているカタールのスタジアム建設には、多数のバングラデシュの出稼ぎ労働者による貢献が知られており、同時に、彼らからの郷里送金はバングラデシュの貴重な外貨獲得源にもなった。
また、現地業界紙によると、アパレル大国バングラデシュでは、各国のサポーターが身に着けるレプリカユニフォームやその他のグッズ類が大量に生産されている。前回2018年のW杯開催時は、1億ドル相当のスポーツグッズの輸出実績があり、今回の開催では2億ドルの輸出を目指したという(「テキスタイル・トゥデー」紙12月13日)。
(薄木裕也)
(バングラデシュ)
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