フランス政府、計画停電の実施方針を発表

(フランス)

パリ発

2022年12月06日

フランスのエリザベット・ボルヌ首相は11月29日、今冬の電力供給不足への対応として、さまざまな対策を講じても需給逼迫を回避できない場合の最終手段として、県ごとの輪番制で1日当たり最大2時間の計画停電を実施する方針を明らかにした(11月29日付閣議議事録外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

停電時間は、電力消費量がピークに達する平日の午前8時~午後1時または午後6~8時に設定される。公共政策などの情報サイト「ビ ピュブリック(「Vie publique)」(11月29日)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、計画停電が実施される3日前にフランスの送電系統管理会社RTEおよびエコロジー移行省が発表を行い、前日の午後9時30分に適用対象となる県のリストが公表される。当日は、RTEが開発した電力需給の逼迫状況を知らせるオンラインサービス「エコワット(EcoWatt)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を通じ、警報が発動される(注1)。

政府は計画停電により、医療機関、公道の照明・信号システム、国防など特定の産業施設の運営に必要な電力を確保することが可能になると説明しつつ、情報通信、交通、学校など市民生活全般に支障が出るとして、計画停電を回避するためにも国民に広く省エネを呼びかけた。

フランスでは現在、国内の原子炉56基のうち定期検査や配管の腐食問題などを理由に26基が運転を停止している。10月に行われた賃上げに絡んだストの影響などから再稼働が遅れており、RTEは11月18日、2023年1月の原発発電容量の見通しを従来の予測から3ギガワット(GW)引き下げ、今冬の電力需給が逼迫する可能性が強まったと発表していた(注2)。

(注1)RTEは、エコワットを通じ、日々の電力需給逼迫状況を赤(極めて逼迫)、オレンジ(やや逼迫)、青(通常どおり)の3つの色で知らせている。赤は停電の危険性が高いため、企業および一般世帯に暖房温度の低減や不必要な照明の消灯など迅速な省エネを要請する警報となる。政府が10月に発表したエネルギー節減計画の一環として(2022年10月11日記事参照)導入された。

(注2)RTEが9月に発表した「2022~2023年冬季電力需給見通しPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」では、原発発電容量は2022年12月中旬に40GW、2023年1月中に45GWに達すると予測していたが、11月18日の発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)では、40GWに達するのは12月末~1月にかけて、45GWに達するのは2月にずれ込むと修正した。9月の見通しでは、2023年1月中の45GWへの回復を前提としたシナリオで、2022年10月からの6カ月間にエコワットが赤となる可能性を、大寒波に見舞われた場合は3~6回になるなどと予測していた。

(山崎あき)

(フランス)

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