カナダのオイルサンド企業連合、ネットゼロへ241億カナダ・ドルの投資計画発表

(カナダ)

トロント発

2022年10月17日

カナダのオイルサンド企業連合のパスウェイズ連合(Pathways Alliance)は10月14日、2030年までに温室効果ガス(GHG)排出量削減プロジェクトへ241億カナダ・ドル(約2兆6,028億円、Cドル、1Cドル=約108円)を投じる計画を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同連合は、オイルサンド生産によるGHG排出量を段階的に削減し、2050年までに排出量をネットゼロにするという最終目標達成に向けて形成された組織で、カナダのオイルサンド産出量の95%を担うカナディアン・ナチュラル・リソーシズ、セノバス・エナジー、コノコフィリップス、インペリアル・オイル、MEGエナジー、サンコア・エナジーの6社から構成される。

今回の計画では、約165億Cドルを二酸化炭素(CO2)回収・貯留(CCS)事業、約76億Cドルを他の排出量削減事業へ充当する。CCS事業では、事前取り組みの一例として、アルバータ州の20以上のオイルサンド施設から回収したCO2を安全かつ恒久的に貯蔵するハブの探索作業などが挙げられ、こうした初期調査を基に事業が進められるという。

パスウェイズ連合のケンドール・ディリング会長は「この規模のCCS事業は、膨大な先行作業と産業界と政府間の強力なパートナーシップがなければ進められない大がかりなものだ。われわれは、カナダのCCSに関する共同出資制度や規制環境が世界的に競争力を持ち、われわれの業界の排出削減目標が現実的で達成可能であるよう、連邦政府やアルバータ州政府と引き続き協力していく」とコメントした。

カナダ連邦政府は7月、石油・ガス業界へのGHG排出枠設定に関する政策案を公表し(2022年7月27日記事参照)、「ネットゼロ経済での石油・ガスの需要は、最終的にはGHGゼロに近い状態で石油・ガスを生産できる地域に完全に集中することになる」との見解を示していた。一方、主要産油州のアルバータ州は「憲法で保護された資源開発能力に干渉しようとする連邦政府のいかなる計画も受け入れない」として、この政策案に反発する姿勢をみせた。10月初旬、アルバータ州では与党・統一保守党の新党首選挙が行われ、選出されたダニエル・スミス氏は、アルバータ州議会が連邦政府の特定の法律や政策の施行を拒否できる「アルバータ主権法」の制定を公約で示しており、今後の連邦政府との歩調の乱れが懸念されている。

こうした状況を受け、前述のディリング会長は「不確実性は『大規模プロジェクト開発の敵』であり、政治的な変動に耐えられるよう、さまざまなレベルの政府が大規模な排出削減事業に契約上の確実性を与えることを望む」と述べつつ、パスウェイズ連合は、政府の規制や要求があるから存在するのではなく、「長期的な展望を持つことなくして、この業界の長期的な未来はないがゆえに存在するのだ」と、同連合への支持を強調した(「グローブ・アンド・メール」紙10月14日)。

(飯田洋子)

(カナダ)

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