自動運転レベル3を条件付きで9月1日から解禁
(フランス)
パリ発
2022年09月05日
フランスは9月1日から、手を離した運転を可能とする自動運転「レベル3」(注)による公道走行を一定条件下で解禁した。具体的には、高速道路など歩行者や自転車の通行が禁止されている中央分離帯のある道路で、時速60キロを限度として、渋滞時に自動車線維持装置(ALKS)による自動運転が運転操作の全てを代替することを可能とする。ただし、運転者は常に運転に戻れる状態でなければならない。
自動運転については、フランスが加盟している道路交通に関する国際条約(ウィーン条約)が2014年3月に改正され、自動運転普及を目的として2016年から自動運転による道路上での走行を認可した。2020年6月には国連の自動車基準調和世界フォーラム(WF29)でALKSに関する国際基準が成立し、2021年から自動運転レベル3による走行が可能となった。また、2022年1月、ウィーン条約にドライバーの代替となる自動運転システムの要件を規定する第34条の2が追加された。
一方、フランス政府は2021年4月14日付のオルドナンス(政府の委任立法権限に基づく法規)と2021年6月29日付施行令(デクレ)で、自動運転が使用条件に従って作動している間の運転者の責任を免除し、自動車メーカーの責任とする(道路法典L123-1~L123-4条)など国内法を整備し、2022年9月1日から施行された。また、2022年7月21日付デクレによりウィーン条約34条の2を公布、自動運転の法的枠組みを構築した。
実際の運行については、自動車メーカーが自動運転システムに関し国の承認を得る必要があるが、現段階でフランスでの承認を得ているメーカーはない。8月31日付「レゼコー」紙によると、ドイツで既に承認を受けたメルセデス・ベンツの広報担当者は「(フランスでの承認取得について)フランスの当局と協議をしているが、(取得の)時期は未定」とし、次の市場としてまずは米国と中国を考えているとした。
クレマン・ボーヌ・エコロジー移行・国土結束相付き交通担当相は9月1日、フランスを道路交通の自動化で欧州のトップに引き上げる規制の進捗に敬意を表した。
(注)自動車技術者協会(SAE International)が定義する自動運転のレベル。レベル3では、限定された領域内でシステムが原則として全ての運転操作を一定の条件下で実行。作動継続が困難な場合、システムの介入などに運転者が適切な対応をする必要がある。
(奥山直子)
(フランス)
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