欧州議会、オンラインプラットフォーム規制のデジタル市場法案とデジタルサービス法案を採択

(EU)

ブリュッセル発

2022年07月11日

欧州議会は75日の本会議で、EUのオンラインプラットフォーム政策の中心となるデジタル市場法案(DMA)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますデジタルサービス法案(DSA)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを採択した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。EUでは、アマゾンやグーグル、メタ(旧フェイスブック)といった米国IT大手を念頭に、こうした企業の持つ支配的な地位はEUの中小企業を圧倒しており、競争が阻害されていることが問題視されてきた。

欧州委は202012月、こうした状況を是正すべく、米国IT大手を中心としたプラットフォームサービスを提供する事業者に対する規制強化を目的として、DMA2020年12月22日記事参照)とDSA2020年12月22日記事参照)を提案していた。EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会での審議を経て、両機関は既に20224月に暫定的な政治合意に達しており、今回の採択はこの合意に基づくもの。EU理事会では、DMA7月中、DSA9月に採択が予定されている。EU理事会の採択後は、それぞれEU官報への掲載の20日後に施行され、DMAの主要部分は施行から6カ月後、DSAの主要部分は施行から15カ月後あるいは202411日のいずれか遅い日から適用を開始する。

DMAは、オンライン仲介サービス、検索エンジン、SNS、動画共有、オペレーティングシステム(OS)、ウェブブラウザ、バーチャルアシスタント、オンライン広告などの「中核プラットフォームサービス」を域内で提供する事業者のうち、特に大規模な事業者として「ゲートキーパー」の指定を受けた事業者を対象としており、ゲートキーパーとしての義務と禁止事項を規定している。なお、今回採択された両機関の合意案では、欧州委提案のゲートキーパーの基準を一部変更しており、過去3年間の域内年間売上高と前年度の株式時価総額の基準を、それぞれ75億ユーロ以上と750億ユーロ以上に引き上げた。また、ゲートキーパーによる義務不履行の場合の制裁金の上限は、過去8年間に同様の不履行が繰り返されている場合に限定されるものの、前年度の全世界の総売上高の最大20%に引き上げている。

DSAは、オフラインで違法なことはオンライン上でも違法でなければないという原則の下、オンライン上の違法コンテンツに対する規制やユーザーの基本的権利の保護を目的としている。DSAの対象となるのは域内で仲介サービスを提供する全ての事業者となるものの、規制は事業者の規模とリスクに応じて設定されるべきとして、規制を特に強化するのは、検索エンジンを含む月間平均4,500万人以上の域内利用者を有する「非常に大規模なオンラインプラットフォーム(VLOP)」事業者だ。この定義に関して、両機関の合意は欧州委提案を維持している。

一方で、両機関の合意では、ロシアによるウクライナ侵攻とそれに伴うオンライン上の情報操作への対応策として、危機対応メカニズムを新たに導入することで一致。危機が発生した場合、欧州委はVLOP事業者に対して、基本的権利の保護のために危機の影響を防止や、排除あるいは制限するために、一定の措置を取ることを求めることができる。ただし、実施すべき措置の内容に関しては、VLOP事業者が決めることができるとした。

(吉沼啓介)

(EU)

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