ケニアで輸入品の知的財産権登録を義務化、2022年7月から

(ケニア)

ドバイ発

2022年05月09日

ケニアの模倣品対策機関(ACA)は4月26日、輸入品の知的財産権登録(Recordation)を義務付ける制度の運用を7月1日より開始すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同日以降、ケニアに輸入される商品に関する知的財産権はACAに登録することが必須となる。ACAへの登録は、AIMSと呼ばれるシステムからオンラインで行う。

ケニアでは模倣品の蔓延が国家的な課題となっている。同国政府は2018年、模倣品の取り締まり強化のため、本登録制度の導入を盛り込んだ「2008年模倣品対策法」を改正PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)していた。ACAは、登録の料金や様式など制度の詳細を定める規則案の検討に約3年をかけ、2021年7月23日に規則を官報で公布・施行PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。しかし、登録システムの構築に時間を要し、実際の運用開始が遅れていた。施行日からさらに約1年を費やして、ようやく2022年7月1日の運用開始にこぎつけた格好だ。

新たな登録制度のポイントは、以下のとおり。

  1. ACAへの商標登録は任意ではなく義務(模倣品対策法34B条1項)。
  2. 知的財産庁での登録とは別制度でACAには別途登録が必要(同法34B条1項)。
  3. ケニア国外の知的財産庁でのみ登録された商標もACAへの登録対象(同法2条柱書き)。
  4. 登録義務を負う者は権利者(公認代理人、ライセンシーおよび譲受人含む)(登録規則2条)。登録者ではない輸入者は権利者のACA登録番号などの情報を記入した様式の提出が必要(登録規則4条)。
  5. 登録は有料で、商標は区分ごとに料金が発生(最初の区分は90ドルで、2区分目以降は10ドル)(同法34B条4項)。
  6. 登録の有効期間は、登録申請の承認日から1年間、またはその商標の現在の登録期間のいずれか短い方の期間で、毎年の更新が必要(同法34B条6項)。
  7. ACAに未登録の商標が付された商品や、ブランド名のない商品(原材料除く)を輸入すると、模倣品の輸入と同様の厳しい罰則が適用(初犯の場合は、5年以下の懲役、または、模倣品とされた商品の一般小売価格の3倍を下回らない罰金、若しくはその両方)〔同法32条(j)、35条1項(a)〕。
  8. 商標以外の知的財産権も要登録(同法34B条12項)。条文は、商標の規定1~7をその他の知的財産権8にも準用する形式。

特に、登録範囲を知的財産権全般に拡大に関する⑧につき、2021年11月16日時点でジェトロが行ったACAへの聴取によれば、他の知的財産権に比較して模倣品の識別に用いやすい商標の登録は全てを必須とする。一方、一商品に多数の権利が関係する特許・意匠・著作権など商標以外の知的財産権については、権利者がACAでの模倣品の判別に重要と考える権利のみ登録を求める、といった柔軟な運用を検討しているようだ。

日系企業からは、模倣品対策の強化を期待する向きもある一方で、登録の範囲や罰則の適用といった運用面のほか、新たなコスト負担や他国への同制度の波及などを懸念する声も挙がる。実際、ACAは予算や人的リソース不足、職員の能力向上などさまざまな課題を抱える。ACA当局の発表から運用開始までの期間は約2カ月と準備期間は短い。ケニアで輸入業を営む日本企業は今後、早急な対応が迫られる。

(関景輔)

(ケニア)

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