モバイル決済システム、アフリカでの特許出願は低調
(アフリカ、ケニア)
ドバイ発
2022年05月20日
ジェトロが現地法律事務所に委託した調査によると、アフリカで従来の発展段階を一足飛びに越えて技術が急速に広がる「リープフロッグ」現象の代表格であるモバイル決済システムについて、関連企業の約93%がアフリカで特許を出願していないことが明らかとなった(以下1と2の合計数)。
アフリカでモバイル決済システム関連の事業活動がみられる企業(アフリカ以外の企業も含む)57社のうち、特許出願状況は以下のとおり。
- 5大知財庁のある日米欧中韓の5大特許庁(以下、「5庁」)を含む世界のいずれでも特許出願していない企業が約70%(40社)。
- アフリカでは特許出願していない一方で、5庁で特許出願している企業が約23%(13社)。
- アフリカと5庁で共に特許出願している企業は約7%(4社)(注1)。
本調査によれば、ケニア携帯事業最大手のサファリコムが展開するモバイル決済システムの「エムペサ(M-Pesa)」に関しても、アフリカで特許が存在していない。サファリコム親会社の英国ボーダフォンは上記3の類型で、5庁にはファミリー単位(注2)で69件と一定数の関連特許を出願している。他方、ボーダフォンがアフリカに出願した4件は、いずれもアフリカ広域知的財産機関(ARIPO)への出願で、いずれも取り下げられていた。サファリコム名義の特許出願は、アフリカおよび5庁ともに存在しない。
大多数の関連企業がアフリカで特許を出願しない理由として、アフリカの知財制度への信頼度の低さが挙げられ、モバイル決済システムのような発明の類型が、ビジネス関連発明としてアフリカ各国で認められにくい可能性が指摘されている。そもそもアフリカ各国では、特許出願件数自体が各国で日本の0.1~2%程度〔世界知的所有権機関(WIPO)統計、2020年〕と全体的に少ない傾向にある。アフリカでモバイル決済システムの特許出願が進んでいないことが、今回の調査で浮き彫りとなった格好だ。
なお、本調査の報告書は2022年4月にJETROウェブサイトで「リープフロッグ型発展技術に関するアフリカにおける知的財産の動向調査(4.4MB)」として公開している。上記の特許分析の具体的な企業名や件数は、本調査報告書の10~11ページに掲載されている。
(注1)調査した特許は、同法律事務所が利用可能な様々なデータベースで、過去20年間(1992~2022年2月)で国際特許分類IPCの「G06Q」(=ビジネス関連発明)で、タイトル、要約または特許請求の範囲を「mobile」「cellular」「banking」で限定。
(注2)複数の国に出願された実質的に同内容の発明のグループをいう。例えば、日本と米国で1件ずつ、合計2件の出願でも、ファミリー単位では1件とカウント。
(関景輔)
(アフリカ、ケニア)
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