米USTR、カナダの乳製品関税問題で協議申し入れ、USMCA活用で2回目

(米国、カナダ)

ニューヨーク発

2022年05月26日

米国通商代表部(USTR)は5月25日、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に基づき、カナダに対して乳製品の関税割当制度(TRQ)の運用に関して紛争解決のための協議を申し入れた外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。USMCAを活用してカナダの同問題を取り上げるのは2回目となる。

TRQは、輸入国政府が特定の輸入品目について、一定量の輸入まで低税率の関税を認め、それを超える輸入については高い関税率を課すことを可能にする制度で、WTOで認められている。USMCAはカナダに対して14種類の乳製品(注)にTRQを維持することを認めている。米国はカナダのTRQ運用に関して、低税率での輸入枠の大部分を、米乳製品業者の競合であるカナダの乳製品加工業者のために確保していることがUSMCA違反になると主張していた。2021年5月には2国間協議で解決できないため、USMCA紛争解決手続きに基づきパネル設置を要請、2022年1月にはパネルが米国の主張を認める裁定を出したとの声明を出している(2022年1月6月記事参照)。カナダ政府は5月16日、パネル裁定を反映したTRQの運用方針を発表している(2022年5月18日記事参照)。

しかし、USTRはプレスリリースで、カナダのTRQ運用はそれを利用したい小売業者を含む一部の輸入者を排除しているなど、引き続きUSMCAでの約束を満たしていないとしている。キャサリン・タイUSTR代表は、「カナダに対しては明確に、新たに導入した運用方針がUSMCAに不整合であり、米国の労働者らがUSMCAの下でカナダが約束した市場アクセスの恩恵を受けることを阻害していると伝えた。今後も農務省と協力して、米国の高品質な乳製品をカナダの消費者に届けるようにしたい」との声明を出している。USTRは2国間協議での解決ができない場合、再びUSMCAの紛争解決手続きに基づくパネルの設置を要請するとしている。

(注)牛乳、クリーム、脱脂粉乳、バターおよびクリームパウダー、産業用チーズ、全種類のチーズ、粉乳、加糖練乳、ヨーグルトおよびバターミルク、粉状バターミルク、乳清、生乳成分で構成される製品、アイスクリームおよびアイスクリームミックス、その他乳製品。

(磯部真一) 

(米国、カナダ)

ビジネス短信 531be1c574e74b19