クワズル・ナタール州で大規模な洪水発生、一部企業や港の操業に影響
(南アフリカ共和国)
ヨハネスブルク発
2022年04月15日
南アフリカ共和国のシリル・ラマポーザ大統領は4月13日、水害被害にあったクワズル・ナタール州を訪問し、被害状況を視察した。同地域では11日から記録的な大雨が続き、大規模な洪水や土砂崩れが発生している。クワズル・ナタール州政府は、インフラなどに数十億ランド相当の被害が出たと推定しており、「豪雨が計り知れない大惨事を引き起こした」と声明を発表、政府に対して「国家災害事態」宣言の発令を要請した。
同州には、南ア最大の貿易港であるダーバン港が位置する。悪天候のため欠航便が増えただけでなく、4月11日未明から同港も冠水した影響で、運輸公社トランスネットは予防措置として操業を停止した。13日からバルクターミナルなどは再稼働しているものの、一部幹線が冠水し閉鎖されているため(4月13日時点)、サプライチェーンへの混乱は免れない。さらに、流されたコンテナを空けて物を盗む被害が発生しており、日系物流企業は港周辺の治安の悪化を懸念する。
メディアによると、周辺に拠点を置く企業にも被害が確認されている。2021年8月暴動により火災被害にあった化学品メーカーは、化学品貯蔵倉庫の汚染防止用ダムが大雨によってあふれ、汚染物質が流出した。また、製造拠点を持つ日系輸送機器メーカーも、洪水により工場が一部浸水したため、4月11日夕方から操業を停止しているという。
南アの自動車業界人材協会(MISA)は、新型コロナウイルスの感染拡大による落ち込みからまだ回復していない小売自動車産業に打撃を与えることを懸念する。MISAによると、先週、新車販売台数が5万台を超え、2019年10月に記録した販売台数を塗り替えたばかりだった。
なお、4月13日時点のメディア報道によれば、今回の災害により、同州では250人以上が死亡したと報告されている。南ア気象局によれば、同州の一部観測所では24時間で300ミリ以上の降雨量を記録したが、今週末も雨予報で、さらなる被害の拡大に心配の声があがる。そうした中、今後、事態が早急に収束し、政府が迅速にどのように救済措置を講じていくかが注目される。
(堀内千浪)
(南アフリカ共和国)
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