2020年の家庭内労働価値は5兆3,000億ドル、コロナ下で家庭内労働時間が増加、米商務省推計

(米国)

ニューヨーク発

2022年02月28日

米国商務省経済分析局(BEA)は2月22日、家庭内労働の生産価値に関するレポートを公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、2020年の家庭内労働は市場価値換算で約5兆3,000億ドル、調整後のGDP比では20.3%に相当することを明らかにした。

通常のGDP統計では、市場を介さずに行われる家事などの家庭内の無償労働は捕捉されないが、それらに費やされる時間は長く、一般の関心も高いことなどから、GDPの推計と整合的なかたちで家庭内労働の貨幣評価額を推計し、通常のGDPと比較する「サテライト勘定」の作成がBEAによって定期的に行われている。その推計方法について、家庭内労働は無償で市場価格が存在しないため、生産要素に帰属させるアプローチが取られている。具体的には、家事などに費やされた労働時間と、類似するサービス費用(チャイルドケア費用など)や使用する財(電化製品など)のコストなどを基に生産価値が推計されている。

これによると、2020年の家庭内労働の生産価値は5兆3,169億ドルで、2020年の家庭内労働を含んだ名目GDP(26兆2,106億ドル)の20.3%に相当するとしている。2020年は家庭内労働のみなし賃金が前年から上昇したことに加え(2019年10.93ドル→2020年12.71ドル)、新型コロナウイルスの影響で家庭内総労働時間が3,000億時間から3,080億時間に増加したことが主な要因としている。

家庭内労働は料理、家事、園芸、移動(送り迎えなど)、買い物、育児、雑用の7つで構成されている。それぞれについて、ほかでの雇用の有無や男女別の各形態でみると、新型コロナ対策のロックダウンなどの影響により、料理や園芸など自宅で行う作業時間がほぼ全形態で増加している。ただし、家事については、雇用されていない女性の労働時間が前年から減少した一方、そのほかの形態では増加しており、家庭内の分業が進んだことがうかがえる。一方、移動や買い物など外出を伴うものについては、外出規制などの影響により全ての形態で労働時間は減少している。育児については、雇用されていない女性の労働時間が前年より大幅に上昇して各形態の中で最多となったことに加え、雇用されている女性の育児時間も2番目に多いことを踏まえると、日本と同様に米国においても育児の負担が女性に偏っていることがうかがえる(添付資料図参照)。

今回公表されたレポートでは、パンデミックによって在宅時間が長くなったことにより、家の整頓や子供の世話などといった家事労働サービスの価値があらためて見直され、人々は家庭内労働にもっとお金を払っても良いと思うようになっている可能性に言及している。パンデミック下のリモートワークなどの浸透などによって増加した家庭内で過ごす時間が、仮にパンデミック収束後も維持された場合には、家庭内労働の生産価値がさらに高まる可能性もあると考えられる。

(宮野慶太)

(米国)

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