エジプト、ウクライナ危機で小麦調達先を多角化へ、LNG輸出拡大も推進

(エジプト、ロシア、ウクライナ)

カイロ発

2022年02月22日

エジプト中央動員統計局によると、2020年の同国の小麦輸入額は32億ドル(1,289万トン)で、そのうち、ロシアからの輸入が19億ドル(780万トン)、ウクライナからの輸入は7億5,366万ドル(318万トン)で、小麦輸入の約9割を両国に依存している。そのため、昨今のロシアとウクライナ間の緊張により、エジプト政府は調達先の多角化を探っており、2月17日にはルーマニアから18万トンの小麦輸入を公表した。

ムスタファ・マドブーリー首相は、4カ月半分の小麦を確保しており、貯蔵は十分とメディアに公表した。一方、ウクライナ情勢の緊迫によって小麦価格が高騰すれば、国民の家計圧迫のほか、政府が小麦の市場価格を安く維持するため輸入と供給を管理しており、財政負担の増加にもつながることが懸念される。政府は人口増加に対応するため、これまでも灌漑による農地の拡大を進めてきたが、ウクライナ情勢の緊迫などを受けて、農家にさらに増産を促す方針を示した。

一方、ロシアとウクライナの関係緊迫により、欧州諸国が天然ガス調達の多角化を迫られる中、エジプトから欧州への天然ガス輸出の機会も狙える。エジプトはこれまでトルコなどにLNG(液化天然ガス)を輸出していたが、2022年に入ってオランダへのLNG輸出も開始した。エジプトでは、2015年に地中海沖で巨大な天然ガス田が発見され、2017年に天然ガスの国内供給が始まった。現在、ENIやBPといった欧州企業による採掘が進んでいるほか、LNG輸出に活用可能な天然ガス液化基地もあるため、欧州などへの輸出拡大が見込まれる。

(井澤壌士)

(エジプト、ロシア、ウクライナ)

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