初の電力容量オークション実施、新設のガス火力発電所も採択
(ベルギー)
ブリュッセル発
2021年11月08日
ベルギーの送電事業者であるエリアは同国で初となる電力容量報酬メカニズム(CRM、注1)のオークション結果を10月31日に発表した。ベルギーは2020時点で、国内に7基の原子力発電所を有し、総発電量の約4割を賄っているが、これらの発電施設を2025年までに全廃することを計画している。このため、連邦政府は脱原子力後の電力の安定供給を保証すべくCRMの導入を決定した。
今回のオークションは、2025年の電力供給の確保ため、連邦政府の要請に基づいてエリアが実施したもので、同社が公表した報告書によると、総発電設備容量4,447.7メガワット(MW)に相当する40件が採択され、年間の1MW当たりの加重平均価格は3万1,671.57ユーロだった。採択された設備容量の内訳は、56%が既存の発電施設、7%がデマンドサイドマネジメント(電力需要者側の制御システム)、1%がバッテリー、36%が高効率のガス火力発電であるガスタービン・コンバインドサイクル発電所(GTCC)の新設によるものとなっている。また、契約年数では、約37%(設備容量ベース)が複数年契約(8年または15年)で、約63%が単年契約。オークション結果は、エリアから電力・ガス規制委員会(CREG)に送付され、同委員会の承認を得て正式に確定する。
新設ガス火力2件採択も、国内での評価は分かれる
新設されるGTCCは2カ所の予定で、東部のアビルとブリュッセル北方のフィルフォールデを予定している。いずれも電力大手のエレクトラベル(フランスのエンジーグループ)が計画している。各種報道によると、アビルについては、ワロン地域政府から建設許可を既に取得しているが、フィルフォールデに関しては、所在するフラームス・ブラバント州が建設を認めない判断を7月に示しており、同発電所の最終的な建設可否については、フランダース政府(注2)の環境相による判断が待たれる。
今回のオークション結果を受け、連邦政府のティネ・バン・デ・ストラーテン・エネルギー相は、必要な設備容量を超える案件提案があり、かつ投資コストを想定以下の水準に抑えられたと評価した。他方、フランス語系中道右派政党の改革運動(MR)のジョルジュ・ルイ・ブシェ党首は、今回の発表が国連気候変動COP26の開催と同日だったことを受け、ガス火力発電所への補助金の投入は「コメディだ」と批判した。
(注1)Capacity Remuneration Mechanismの略。電力供給力に対して特定の報酬を与えることで、供給力と新規投資の確保を目指すもの。ベルギーの容量メカニズムは「信頼度オプション(reliable option)」に基づくもので、契約期間中、連邦政府から契約単価に基づく報酬を得る一方で、市場価格が一定額を上回った場合は、その分を払い戻す義務を負う。オークションは対象年度(今回の場合は2025年)に対して2回実施される。対象年度の4年前に1回目が行われ、さらに対象年度の前年に電力の需給状況や新設案件の進捗を考慮した上で2回目のオークションが行われる。
(注2)ベルギーでは、経済政策は地域政府、文化・教育政策は言語共同体政府が管轄している。フランダース地域では、地域政府とフラマン語共同体政府とが事実上統合され、共通の政府・議会を有することから、「地域政府」ではなく「政府」と呼称。
(山田泰慎)
(ベルギー)
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