韓国で尿素水が品薄に、物流が混乱する恐れ

(韓国)

ソウル発

2021年11月09日

韓国では最近、ディーゼルエンジン貨物車などで使われている尿素水が品薄になっており、物流が混乱する懸念が高まっている。原料の尿素の中国からの輸入がストップした上に、尿素水の買い占めが起きたことによるものだ(注1)。

大型貨物車は窒素酸化物(NOx)の排出量が多く、100キロ走るごとに尿素水1リットルを必要とする。このまま尿素水の品薄状態が続けば、全国のトラックがストップし、物流に大きな影響が及びかねない。

尿素水は、石炭や天然ガスなどから抽出した尿素に超純水(蒸留水)を混ぜて作る(注2)。韓国では2013年まで尿素を生産する企業があったが、中国産などに比べて価格競争力が低く、生産を中止し、現在は輸入に依存している。韓国の尿素消費量のうち中国から輸入の割合が60%を超えているため、中国からの輸入停止の影響は甚大だ。

環境部によると、韓国の2020年の尿素輸入量は83万5,000トンで、農業用(55.5%)と産業用(34.7%)、自動車用(9.8%)として利用されている(添付資料表1参照)。現在、登録されているディーゼル貨物車332万台のうち、排出ガス低減(SCR)装置(注3)を装着し、運行に尿素水が必要となる貨物車が約55万台となっている(添付資料表2参照)。

韓国政府は物流の混乱を防ぐため、中国政府に迅速な輸出検査を要請するとともに、輸入先の多角化を進める方針。なお、短期的な対応策として、工業用尿素水を車両用に転換する方法を検討しているが、工業用尿素水も足りない状況なため、根本的な対策にはならない。製鉄所内の発電所やボイラーにも、窒素酸化物を除去するためにも尿素水が必要となる。尿素水が確保できない場合、韓国国内の主要工場が停止する恐れもある。

(注1)中国政府は10月15日、輸出貨物表示義務化のリストを変更。当該リストに尿素も含まれており、事実上の輸出制限措置となっている。

(注2)尿素水は、2016年以降に製造・輸入されたディーゼルエンジン車に装着が義務付けられている「排出ガス低減装置(SCR)」に入る必須品目。尿素水が足りなければ、ディーゼル車両のエンジンがかからないように設計されている。

(注3)SCR(Selective Catalytic Reduction)装置は排気ガス浄化技術の1つで、ディーゼルエンジンの排気中の窒素酸化物(NOx)を浄化する技術。「選択的触媒還元」を意味する。触媒剤として、尿素水を使用する方式が主流。

〔李丙鎬(イ・ビョンホ)〕

(韓国)

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