ド・クロー首相、COP26で再生可能エネルギーへの移行促進の取り組み紹介
(ベルギー)
ブリュッセル発
2021年11月05日
ベルギー連邦政府のアレクサンドル・ド・クロー首相は11月2日、英国グラスゴーで開催された国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で演説を行った。
首相は、7月に発生した豪雨による洪水で国内で41人の犠牲者が出たことに触れ、ベルギーをはじめ欧州も気候変動による影響を受けていると訴えた。その上で、ベルギーは世界の洋上風力発電を牽引するために継続した投資を続けており、2030年までに北海の洋上風力発電施設の発電容量を3倍に引き上げることで、ベルギーの全家庭向けに必要な電力供給を可能とするとした。また、領海の洋上風力発電施設と北海周辺の再生可能エネルギー生産施設を接続するエネルギーアイランドの建設計画などの取り組みを紹介した。さらに、ベルギーはクリーン水素を供給する最重要ハブの1つとなることを目指しているとして、より迅速で野心的な気候変動に対する行動を呼びかけた。
北海の洋上風力発電の発電容量を増強する計画について、連邦政府は10月18日に閣議決定し、その意向を表明している。具体的には、より大型で強力なタービンを導入することで、現状の発電容量の約3倍となる5.8ギガワット(GW)まで高め、国内の総発電量の4分の1を賄うことを目指すとしている。
また、フランダース政府(注)は同日、欧州投資銀行(EIB)と水素プロジェクトに関する覚書を締結した。フランダース政府はEIBの融資対象となり得る有望なプロジェクトを選定し、共同で支援していくことに合意しており、ベルギーの地域レベルでも再生可能エネルギーへの移行を進める取り組みが進んでいる。
より野心的なGHG削減目標の設定も
連邦政府は今回のCOP26に先立つ10月8日、2030年までの温室効果ガス(GHG)削減目標として、1990年比で55%、2億3,300万トンの二酸化炭素(CO2)を削減することを閣議決定した。ベルギーでは2019年末に発表した「国家エネルギー・気候計画」で、既に同2億800万トンのCO2削減を目指していたが、この新たな削減目標の設定により、2,500万トンを追加で削減することを目指す。CO2のさらなる削減分はグリーン化税制(社用車向けの税制改革など)や、環境ボーナス、輸送(カーボンニュートラルな燃料利用に向けた措置など)、建物、製品基準などに新しい政策を導入、もしくは既存の政策を強化することで対応する見込み。
(注)ベルギーでは、経済政策は地域政府、文化・教育政策は言語共同体政府が管轄している。フランダース地域では、地域政府とフラマン語共同体政府とが事実上統合され、共通の政府・議会を有することから、「地域政府」ではなく「政府」と呼称。
(大中登紀子)
(ベルギー)
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