北米首脳会合結果をメキシコ政府は評価、電力国有化に関する懸念は表明されず

(メキシコ、米国、カナダ)

メキシコ発

2021年11月24日

11月18日に開催された北米3カ国の首脳会談(2021年11月22日記事参照)および同日に開催されたカナダおよび米国との2国間首脳会合について、メキシコ政府は一定の評価をしている。

アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)大統領のツイッターやマルセロ・エブラル外相の記者会見によると、メキシコ政府は新型コロナウイルス対策、特に米州途上国への協力に関する合意が得られたこと、在米メキシコ移民の権利保護や中米諸国の移民対策のためにメキシコが主張していた社会プログラムを、米国との協力でホンジュラスで実施することなど、移民問題を根源から解決するための社会政策の重要性について米国との間で合意が得られたことを高く評価している。また、以前から問題視されていた米国からの武器の違法輸入についても、米国政府と協力して取り組む合意がなされたこと、メキシコ政府が重視する水力発電におけるカナダ政府の技術協力の約束がなされたことなどを高く評価した。

電力再国有化に関する米加からの懸念表明はなし

メキシコの企業家調整評議会(CCE)、米国商工会議所、カナダ商工会議所は11月17日、北米首脳会談に先立ち、3カ国の経済界からの提言として、主に以下を考慮に入れることを3カ国政府に要請する声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを出した。

  1. 米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)を完全に運用すること(規定の順守)
  2. 北米の競争力を強化し、域内サプライチェーンを強化するため、投資に対して開かれたかつ透明性の高い環境を整備すること
  3. パンデミックから学んだ教訓を生かし、緊急事態への対応を改善し、北米に必要不可欠な産業やサービスを特定する政策調整を民間部門との意見交換の下で行うこと

3カ国の経済界は、2.の中で特に、国営企業を優先し、民間の再生可能エネルギー発電事業者を不利な立場に置くメキシコのエネルギー政策(2021年10月4日記事参照)を問題視し、投資の安定性を害し、コストを増加させ、3カ国の労働機会を減少させることにつながると警鐘を鳴らしている。また、主要紙の報道によると、同17日にはテキサス州やカリフォルニア州の7人の米国会議員がバイデン大統領、ケン・サラサール在メキシコ米国大使、キャサリン・タイ米国通商代表部(USTR)代表、アントニー・ブリンケン国務長官、ジーナ・レモンド商務長官、ジェニファー・グランホルム・エネルギー長官に書簡を送り、メキシコのエネルギー政策に対する深刻な懸念を伝えている。

これらの懸念表明にもかかわらず、首脳会談では同問題について、米国政府もカナダ政府も正式に取り上げなかった。エブラル外相の首脳会談後の記者会見によると、この問題は首脳会談の正式な議題にはなっていなかったようだが、AMLO大統領は現行の法的枠組みがメキシコにとって持続的ではなく、電力コストを増加させ、年々、補助金支出が増えていると説明したようだ(主要各紙2021年11月18~19日)。

(中畑貴雄)

(メキシコ、米国、カナダ)

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