マクロン大統領、戦略分野に300億ユーロの投資計画を発表
(フランス)
パリ発
2021年10月14日
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は10月12日、産業競争力の強化と未来産業の創出に向けた新たな投資計画「フランス2030」を発表した。原子力、水素、航空機のほか、電子部品やディープテックなどの戦略分野に5年間で約300億ユーロを投資する。
300億ユーロのうち、原子力・水素エネルギーを使ったクリーン電力への転換や製造業の脱炭素化に80億ユーロを充てる。原子力分野には10億ユーロを投資し、より安全な廃棄物再処理技術と小型モジュール原子炉の開発を目指す。グリーン水素製造分野ではリーダーとなるべく、2030年までに国内に大型製造施設を少なくとも2カ所設置する。製造業では鉄鋼、セメント、化学産業を中心に脱炭素化を進め、2030年の温室効果ガス排出量を2015年比で35%削減する。
輸送部門には40億ユーロを投資し、電気自動車とハイブリッド車の国内生産台数を200万台に引き上げるとともに、2030年までに低炭素航空機の国内生産を前倒しで開始する。農業分野では安全かつ持続可能でトレーサビリティーの高い食品への移行に向け20億ユーロ、健康分野ではがんや慢性疾患に関わる20種のバイオ医薬品の国内生産や未来の医療機器の開発に30億ユーロ、宇宙産業と海底探査には20憶ユーロを充てる。文化・娯楽産業には新たなコンテンツの制作などに投資する。
マクロン大統領は、同投資計画の成功にはプラスチック、金属、レアアースなどの素材、半導体などの部品、デジタル技術、優秀な人材、破壊的技術の産業化に向けた資本の確保が条件になると述べ、人材育成に25億ユーロ、半導体チップなど電子部品の国内生産に60億ユーロを投資するとした。さらに、ディープテック分野のスタートアップに50億ユーロを投資(うち30億ユーロを出資)して産業化を支援し、同分野で2030年までに年間100カ所の製造拠点設立を目指すとした。
また、同計画の早期実現に向け、2022年にも30~40億ユーロの投資を実施する意向を示した。
(山﨑あき)
(フランス)
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