新型コロナワクチン接種証明書による入国時検査や隔離の免除進展
(タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナム、オーストラリア、ニュージーランド、インド、中国、韓国、EU、英国、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、スイス、ロシア、米国、カナダ、ブラジル、メキシコ、チリ、ペルー、中東、アラブ首長国連邦、トルコ、サウジアラビア、イスラエル、アフリカ、南アフリカ共和国)
国際経済課
2021年07月07日
欧州の主要国を中心に、新型コロナウイルスワクチンの接種証明書の提示を条件に、入国時のPCR検査や入国後の隔離、陰性証明書の提出など免除する動きが広がり始めた。他方、インドネシアなど新型コロナ感染拡大が続く国では、国内移動に際してワクチン接種証明書の携行・提示を求める新たな措置が導入されている。6月28日~7月6日に現地で収集した情報を基に、世界主要国・地域におけるワクチン接種の進展や接種証明書の発行・相互承認の状況、同証明書を条件とする活動制限緩和の動きなどをまとめた(添付資料表参照)。
EUでは、7月1日から各国が発行する証明書を「デジタルCOVID証明書」として域内で相互承認するシステムの本格運用が開始された。デジタルCOVID証明書は、(1)ワクチン接種証明、(2)検査結果の陰性証明、(3)回復証明の3種類がある。各加盟国の発行する証明書は共通のプラットフォーム「EUゲートウェイ」により認証され、EU全域で有効となる。既にEU全加盟国とEFTA加盟国(アイスランド、ノルウェー、リヒテンシュタイン)がシステムを導入済みだ(2021年6月4日記事参照)。
なお、7月6日現在、EUは日本を「新型コロナ感染リスクが低い国」として、不要不急の入域制限解除国に分類している。各加盟国は原則として、日本からの渡航者に対する入国制限を解除しており、ワクチン接種の有無にかかわらず入国が認められるが、EUの承認済みワクチン(ファイザー、モデルナ、アストラゼネカ、ジョンソン・エンド・ジョンソン)接種証明書の提示により、陰性証明書の提示や自主隔離等の義務が免除される。また、ドイツやフランスでは、入域制限解除国以外の国・地域からの渡航者に対しても、ワクチン接種証明書の提示を条件に入国制限を解除しているほか、入国後の検査や自主隔離、陰性証明の提示を免除とする措置を導入している(2021年6月4日記事参照)。
韓国では、7月1日から重要なビジネス上の目的、学術・公共目的、人道的目的、公務国外出張に限り、海外でワクチン接種を完了し2週間以上が経過したことを条件に、入国時の証明書提示により、2週間の隔離を免除する新たな基準の適用を開始した。ワクチンの種類は、世界保健機関(WHO)緊急承認済みのファイザー、モデルナ、ジョンソン・エンド・ジョンソン(ヤンセンファーマ)、アストラゼネカ、コビシールド、シノファーム、シノバックの7種類に限定している。
米国では、7月4日時点で全人口の55%、18歳以上の人口の67%が少なくとも1回のワクチン接種を終えている。ワクチン接種証明に当たる「ワクチンカード」の提示により、米国内旅行や事前検査なしでの旅行目的の出国、国内外旅行後の自主隔離検査の免除などを認めている。しかし、他国・地域との間での同証明書の共通化や相互承認は進めておらず、国外からの渡航者に対して各国発行のワクチン証明に基づく制限緩和措置も導入していない。
そのほか、東南アジア地域では、各国で6月ごろから本格的な接種計画が始動しているものの、接種率はシンガポールを除いて相対的に低く、ワクチン証明書に基づく入国制限や入国後の防疫措置の緩和は進んでいない。そのような中で、タイは7月1日から「サンドボックス制度」として、対象地域をプーケット島に限定し、ワクチン接種証明書の所持を条件に隔離措置免除による外国人旅行者の受け入れを開始した。ただし、同制度を利用した日本からの旅行者の渡航は認めておらず、ビジネス目的に限っている。
インドネシアでは、国内の感染拡大に伴いって7月3日から緊急活動制限を再び導入し、また国内の長距離移動の際、最低1回のワクチン接種証明書の提示を求める新たな移動制限を開始した。さらに、7月6日からは出入国に係る規制強化も導入し、外国人のインドネシア入国には、2回のワクチンの接種完了を示す接種証明書が求められることになった。
なお、同国では6月19日から、感染危険度の高い地域の住民や、社会的弱者(低所得者など)向けの公的接種が開始され、ジャカルタ首都圏や、西ジャワ州バンドン圏などの18歳以上が接種対象に加わった。同時に、現地の外国人駐在員を含む外資系企業の従業員などのワクチン接種は、インドネシア商工会議所(KADIN)が窓口の有料の自主接種プログラム「相互扶助ワクチン接種プログラム」への申請・登録が必要で、5月末の段階では2万8400社が登録済みという。ジェトロが6月に実施したアンケートによると、進出日系企業241社のうち54%が同自主接種プログラムに登録済みとなっている。しかし、自主接種プログラムに基づく接種証明書の発行については、7月6日時点では明らかにされていない。
その他の主要国・地域の状況については添付資料の一覧表を参照。
(伊藤博敏)
(タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナム、オーストラリア、ニュージーランド、インド、中国、韓国、EU、英国、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、スイス、ロシア、米国、カナダ、ブラジル、メキシコ、チリ、ペルー、中東、アラブ首長国連邦、トルコ、サウジアラビア、イスラエル、アフリカ、南アフリカ共和国)
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