交通省、合成燃料などの実証研究に6億4,000万ユーロ助成

(ドイツ)

ミュンヘン発

2021年06月03日

ドイツの交通・デジタルインフラ省(BMVI)は5月11日、再生可能エネルギー由来の合成燃料(注1)および次世代バイオ燃料(注2)(以下、合成燃料など)の研究開発などに対し、2024年までに総額6億4,000万ユーロを助成すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。船舶、航空機、自動車での合成燃料などの利用が期待されている。

本助成は、BMVIが2021年1月に発表した再生可能エネルギー由来の合成燃料などを推進するプログラム外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの具体策の1つ。このプログラムの目的は、合成燃料などの導入で2030年までに二酸化炭素(CO2)排出量を1,000万トン削減する目標に寄与すること。実施期間は2021年から2024年までで、全体の助成額は15億4,000万ユーロ。予算は、「エネルギー・気候基金(EKF)」(注3)および連邦政府の「国家水素戦略」(2020年9月9日付地域・分析レポート参照)から拠出される。

今回の助成対象は、大学・研究機関や企業が実施する、合成燃料などの生産方法の改良・最適化などを目的とする研究開発。具体的には、合成燃料などの(1)市場化・実用化を目指す実証プロジェクト、(2)生産プロセスを最適化・効率化し価格低下に寄与するプロジェクト、(3)開発に関わるネットワーク構築・支援や新生産方式の認証などに寄与するクラスター活動など。BMVIは、合成燃料などの生産は技術的には確立しているものの、大量生産が行われておらず、結果として、市場でも流通せず価格も高いとする。今回の助成内容の詳細はBMVI外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます指針(ドイツ語)で確認できる。

交通部門の二酸化炭素削減に向けては、電気自動車(BEV)の導入などが注目されている。ただし、BMVIは、BEV導入だけでは目標達成に不十分として、合成燃料などの導入も支援していく。アンドレアス・ショイアー交通・デジタルインフラ相は「交通部門の二酸化炭素削減目標達成のため、合成燃料などはとても重要な礎。現状、BEVが急拡大しているものの、合成燃料等の活用なくして立ちいかない」と表現している。

2021年下半期には、プログラムのもう1つの柱である、合成燃料などの生産施設の改良・新設のための投資を支援する、助成スキーム(総額9億ユーロ)が発表される予定だ。

(注1)二酸化炭素と水素を合成して製造される燃料。再生可能エネルギー由来とは、太陽光発電や風力発電などで得た電力を使い、水電解で生成された水素を活用して製造したもの。

(注2)都市ごみなどを原料とするバイオ燃料で、混合比率の制限がなく、ジェット燃料の代替も可能なもの。

(注3)2011年に設立された、再生可能エネルギー、エネルギー効率化、国内的・国際的な気候保護、環境、電動モビリティ関連のプロジェクトと研究に投資を行うための基金。

(クラウディア・フェンデル、高塚一)

(ドイツ)

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