政労使タスクフォース、ポストコロナの新経済戦略提言を発表

(シンガポール)

シンガポール発

2021年05月21日

シンガポールの政労使の代表が参画する「力強く再生タスクフォース(EST)」は5月17日、新型コロナウイルス流行終息後の経済戦略の最終提言をまとめた、118ページに及ぶレポートPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を公表した。同タスクフォースは、オンライン上での内外との貿易や取引などを拡大するほか、環境ビジネスでの機会を追求し、東南アジアを中心とした国際パートナーシップの強化を目指す方針だ。

ESTは、2020年5月に官民の経済諮問委員会「未来経済委員会(FEC、注1)」の下に設置された産官学および労働組合、スタートアップなどの代表で構成された委員会。ポストコロナの経済戦略の提言をまとめるのと同時並行で、次世代の経済を牽引すると期待される9分野で官民のアライアンス「行動のためのアライアンス(AfA)」が設置された。アライアンスが結成されたのは、(1)サプライチェーンのデジタル化、(2)持続可能な環境ビジネス、(3)設計から着工、管理までの建設分野のデジタル化、(4)オンラインと実店舗を結ぶスマート小売り、(5)ロボティクス、(6)観光とイベント、(7)教育テック、(8)医療機器(メドテック)、(9)農業テック、の9つの分野(注2)。ESTのレポートによると、AfAは、プロトタイプから実用最小限の製品(MVP)までを短期間で柔軟に開発する「スタートアップ方式」を採用したとしている。例えば、AfAのうち、ロボティクスのアライアンスは2021年1月から3カ月間、国内2カ所でオンデマンド型の自動シャトルバスの運行実験を実施した(2021年1月27日記事参照)。

ESTは提言の中で、官民が連携して共同開発するAfAのモデルのさらなる拡大を提言。また、モノやサービスのオンライン市場を確立することで貿易ハブとしての地位を強化し、東南アジアを中心にデジタル取引の円滑化など国際的なパートナーシップを強化することも求めている。さらに、排出取引の振興や、農業テックなど持続可能な環境分野でのビジネス機会の追求も提言した。FECは今回のESTの提言を受け入れ、同委員会が策定する「産業変革マップ(ITM、注3」に折り込む方針。

(注1)未来経済委員会(FEC)は向こう10年の経済戦略立案のために2015年に設置され、2017年に戦略提言を発表した政労使代表からなる委員会。

(注2)次世代を牽引する7分野のAfAは2020年6月に設置され、同年11月に新たにメドテックと農業テックのAfAが設置された。

(注3)FECは、国内23の業種について人材育成を含めた業種ごとの産業変革マップ(ITM)を策定している。詳細は貿易産業省のホームページ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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