国際仲裁で存在感増す香港、ロンドン大学調査
(香港)
香港発
2021年05月14日
英国ロンドン大学クイーン・メアリー校が5月6日に発表した「2021年国際仲裁調査」(注)によると、香港は世界の望ましい紛争仲裁地として3位にランクインした。
国際紛争の仲裁に望ましいと考える5つの都市を自由に記述するよう求められた回答者の50%が香港を挙げた。2015年の調査では22%、前回18年は28%で、香港では2019年以降、大規模な抗議活動や国家安全維持法の施行などさまざまな環境変化が見られたものの、今回は20ポイント以上上昇した。複数の回答者が安心感と質の高さから当然の選択とした。
なお、首位は同率(54%)でロンドンとシンガポールだった。
香港における紛争仲裁金額も伸びている。香港国際仲裁センター(HKIAC)発表の2020年の統計によると、仲裁総額は88億ドル(米ドル、以下同様)で、2019年の47億ドルから87%増となった。紛争申し立て企業の所在地は45カ国・地域にわたり、香港や中国のほか、英領バージン諸島、米国、ケイマン諸島に本拠地を置く企業が多い。なお、シンガポール国際仲裁センター(SIAC)が取り扱った2020年の仲裁案件の総額は85億ドルで、2019年の81億ドルから5%増だった。紛争申し立て企業の所在地はインドと米国が上位だった。
香港政府の鄭若驊(テレサ・チェン)司法長官は5月7日、この調査結果について、長年の仲裁サービス普及に向けた取り組みが評価されたとし、「香港の司法は独立・公正なもので、コモンローシステムは投資家や国際ビジネスコミュニティーに対し、確実性と予測可能性を与えている。法律や商取引、紛争解決サービスの国際的ハブとして、香港の地位を引き続き確固たるものとするよう努める」とコメントした。
(注)原題は「2021 International Arbitration Survey:Adapting arbitration to a changing world」。調査回答者は、世界39カ国53都市の弁護士や仲裁人、仲裁機関職員など1,218人。調査結果全文はロンドン大学クイーン・メアリー校ウェブページ、または調査パートナーのホワイト&ケース法律事務所ウェブページで確認できる。
(渕田裕介)
(香港)
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