福井の繊維メーカー・セーレン、ハンガリーに欧州初の工場進出発表
(ハンガリー、福井)
ブダペスト発
2021年04月20日
福井県の繊維メーカー、セーレンは4月16日、ハンガリー南部ペーチで自動車用合皮シート材を生産する新会社を設立すると発表した。新会社の設立は4月中の予定で、11月には工場の建設を開始する。2022年9月から先行生産を行い、同年12月から量産を開始するとしている。投資額は4,260万7,000ユーロ(土地購入代金や設備代を含む)で、新規雇用は170人(量産開始時点)を予定。売上高として2023年に約88億円、2024年には約110億円を見込んでいる。
プレス発表は在日ハンガリー大使館とブダペストの外務貿易省で同時開催された。ハンガリーでの発表では冒頭、川田達男会長のビデオメッセージが流され、「欧州初の生産拠点として、車両資材部門の戦略商品の柱で、環境に配慮したポリウレタン製合成皮革シート材の生産を手掛ける」とし、EU市場向けを中心に生産・販売拡大を進めていく計画とした。ハンガリーへの投資を決定した背景として「投資環境の良さと、投資誘致機関をはじめとしたハンガリー政府や関係者による手厚い支援が決め手となった」とも語った。
シーヤールトー・ペーテル外務貿易相は「経済を刺激するためには、個人ではなく企業に補助金を出して雇用を守ることの方が有益だと考えている」とし、「セーレンは152億フォリント(約54億7,200万円、1フォリント=約0.36円)の投資を行い、これに対して政府は46億フォリントの補助金を提供した」とコメント。また「最先端技術を有した企業がハンガリーを選択した。同社は第1フェーズとして2万6,000平方メートルの工場で、環境に配慮し、最先端の技術で作られた合皮シート材を欧州市場向けに年間400万メートル生産する予定だ。ハンガリーに進出してもらったので、私は欧州の主要な自動車関連メーカーとの橋渡しをしたい」とも語った。
日本での発表では、パラノビチ・ノルバート駐日大使が「私が直接支援をしたセーレンがハンガリーに法人を立ち上げたことと、自身の出身地であるペーチを客観的な判断からセーレンが評価してくれたことをうれしく思う」と述べた。「ハンガリーはもはや昔の共産国家ではない。地理的には中欧の真ん中に位置して、政治的に安定し、2019年のGDP成長率は5%近い。9%と非常に低い法人税と、重点産業分野に対して優遇策を提供する、最高の投資環境を提供できる国だ」と話し、「今後も同社の進出に対して最善を尽くしたい」と述べた。
川田会長も「2020年11月に欧州進出の検討を行い、ハンガリーやポーランド、チェコの情報を集めた。大使に情報を提供してもらい、現地を訪問してハンガリーに進出することを決定した。投資環境を調査する中で、ハンガリー国民は優秀で真面目、日本国民と通じるところがあると感じた。新型コロナウイルスで大変なところをハンガリー政府には積極的に支援いただいた。短期間で進出を実現できたのは、政府の理解ある対応のおかげ」と、今回の進出に当たってハンガリー政府の支援が決め手となったことを明かした。
(末廣徹、関根成子)
(ハンガリー、福井)
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