中国製ワクチンの安全性に否定的な声、大学の世論調査

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2021年04月15日

アルゼンチンのサン・アンドレス大学が新型コロナウイルスワクチンについて、全国の18歳以上を対象に実施した世論調査(実施期間は3月3~15日)によると、アルゼンチン国民は「ロシア製ワクチンの安全性が最も高く、中国製ワクチンの安全性は低い」と感じていることがわかった。

4月9日現在、アルゼンチンで承認済みの新型コロナワクチンは、ロシア国立ガマレヤ研究所とロシア直接投資基金(RDIF)の「スプートニクV」、米国ファイザーの「コミナティ」、英国アストラゼネカの「ChAdOx1-S」、インド血清研究所の「コビシールド」、中国シノファームのワクチン(Vero Cell)だ。コビシールドは、インド血清研究所がアストラゼネカとのライセンス契約に基づき生産する、アストラゼネカとオックスフォード大学が共同開発したワクチンだ。アストラゼネカが製造するワクチンと中身は同じだが、コビシールドは政府が緊急使用を認め、アストラゼネカ製ワクチンはアストラゼネカが承認申請をしたという違いがある。このほかに、ヤンセンファーマのワクチンなどが承認待ちだ。これまでにスプートニクV、シノファーム製ワクチン、コビシールドなどを含むアストラゼネカ製ワクチン(注)の約727万回接種分がアルゼンチンに輸入されているが、その大半がスプートニクVとなっている。

世論調査によると、国民が最も安全と感じているのは「スプートニクV(ロシア)」で、「51%が安全性に肯定的、12%が安全性について否定的」な回答をした(添付資料図参照)。最下位は「コビシールド(インド)」で、「肯定的な回答をしたのは34%」にとどまった。コビシールドがアストラゼネカ製ワクチンと同一のワクチンにもかかわらず肯定的な回答が少なかったのは、インドという国民になじみのない国で製造されたワクチンだからかもしれない。その次に評価が低かったのが「シノファーム(中国)」で、「肯定的な回答は38%」にとどまった。逆に、否定的な回答の比率は「シノファーム(中国)」が23%と、認可も接種もされていないワクチン含む全てのワクチンの中で最も高かった。

とはいえ、国民の評価は時間とともに変化するだろう。アルベルト・フェルナンデス大統領は4月3日、スプートニクVを2度接種したにもかかわらず、新型コロナウイルスに感染したと発表した。世論調査が行われたのは3月3から15日なので、スプートニクVへの評価は変わるかもしれない。

ただ、中国疾病予防コントロールセンターの高福主任が、中国製のワクチンの有効性が低いと発言したことを受け、1回目の接種を優先し、2回目の接種を遅らせることを決めた政府のワクチン接種計画を不安視する声も聞こえてきた。

調査時点では、回答者の72%がワクチン接種を希望している。4月に入り1日当たりの新規感染者数が過去最高を連日更新する中、早期のワクチン接種を求める声は強まっており、ワクチンへの国民の信頼性は今のところ揺らいでいない。4月7日、サンティアゴ・カフィエロ首相が「国でなくともワクチンを確保し輸入することは法的に認められている」と述べ、9日付の現地紙「クラリン」は、ブエノスアイレス市が独自にワクチン調達に動き出したと報じている。国民は接種するワクチンの種類を選ぶことはできないが、感染拡大の抑制に向けてワクチン接種の加速が期待される。

(注)ワクチンの国際的な共同購入の枠組み「COVAXファシリティー」により、韓国のSKバイオサイエンスが受託製造したアストラゼネカ製ワクチンも3月28日に輸入された。

(西澤裕介)

(アルゼンチン)

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