中小企業・個人事業主の支払い能力強化へ110億ユーロの支援策実施

(スペイン)

マドリード発

2021年03月23日

スペイン政府は3月13日、新型コロナウイルス感染拡大の影響による中小企業や個人事業主の倒産、破産急増の防止を目的とした110億ユーロ規模の支援法外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを施行した。(1)返済不要な給付金(70億ユーロ)、(2)新型コロナウイルスに関わる政府信用保証枠の債務再編(30億ユーロ)、(3)中企業への公的資金注入(10億ユーロ)、(4)破産申請義務停止の2021年末までの延長が柱。

足元では倒産件数が増加

目玉である70億ユーロの返済不要の給付金(添付資料表参照)は、宿泊や飲食、小売り・卸、輸送、文化娯楽など90以上の業種が対象。2020年の事業収入が前年よりも30%以上減少した中小企業などに、事業収入の減少分の一部として最大3,000~20万ユーロを補助する。用途は債務返済、サプライヤーへの支払い、給与、家賃などの固定費に限定。また、うち20億ユーロは、観光に大きく依存するカナリア、バレアレス州に割り当てられる。支給は各自治州が担当し、具体的な申請や給付の開始は5月以降となるとみられる。

中小企業向け給付金は、2020年3月以降、周辺国の多くで導入されていたが、スペインでは一部の自治州がごく小規模に行う程度だった。しかし、新コロナ禍の長期化で、観光依存業種を中心に事業収入の減少や膨らむ債務に対応しきれない企業が増加したため、今回支給に踏み切った。破産申請義務の停止により、2020年の企業倒産件数は前年比14.4%減の4,097件に抑え込まれているが、第4四半期(10~12月)は前年同期比で34.8%増の急増を示すなど、ほころびが見え始めている。

今回の支援は2021年末で終了

その他の支援措置も中小企業の支払い能力強化が目的だ。30億ユーロの政府信用保証枠の債務再編では、累積1,210億ユーロに上る新型コロナ関連の政府信用保証を活用した借り入れについて、返済条件の緩和や政府保証付きの利益参加型ローン(注)への組み替えを行い、企業財務を下支えする。10億ユーロの公的資金注入は、既に大企業を対象に導入済みのソルベンシー支援と同様、政府系金融機関が優良中企業に資本増強を行う。

また、破産申請義務の停止も2021年末まで延長しており、非効率な企業の延命ではなく、優良企業の倒産回避をピンポイントに行うべく、比較的厳格な申請条件を定めた。

(注)実質的には融資だが、商法上は債権ではなく出資というかたちでの資金融通となり、利益に連動して出資者(この場合は銀行)に分担金が支払われる仕組み。赤字の場合は実質的な利子はゼロとなる。

(伊藤裕規子)

(スペイン)

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