日系企業開発のマタバリ港に初の外航船が到着
(バングラデシュ)
ダッカ発
2021年01月21日
日本の大型円借款案件で、住友商事など日系企業を中心にバングラデシュ南東部に開発中のマタバリ港(チョットグラム管区コックスバザール県)に12月29日、初となる外航船が到着した。ベンガル湾からマタバリ港へアクセスするためにしゅんせつしている航路を利用した。これまではバングラデシュ最大の港であるチョットグラム港を経由して搬入されていたマタバリ火力発電所建設の発電用資材を、大型外航船でベンガル湾からマタバリ港に直接運べるようになった。直接航路によって輸送効率が大幅に向上すると期待されている。水深約16メートルの深海港のマタバリ港の稼働開始により、マタバリ地区では今後、火力発電所の建設など電力・エネルギーを中心とした包括的な産業開発の加速化も期待される。
現在、バングラデシュの海上貨物の98%がチョットグラム港から輸入されている。2016年時点で貨物の取扱量は235万TEU(注)と、設計上の貨物取扱容量(175万TEU)を既に超えていた。「2020年度海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)」によると、バングラデシュに進出済みの日系企業にとって「通関に時間を要する」という項目が大きな課題となっている(添付資料表参照)。国別にみても「通関等の諸手続きが煩雑」と回答した企業は、バングラデシュが最も高い割合で、通関が主要な課題であることが分かる(添付資料図参照)。マタバリ港の開発により、こうした輸送環境の改善も期待されている。
マタバリ港の開発と火力発電所の建設は、2014年に経済インフラと投資環境の整備、地域連結性支援への協力を目的に、日本・バングラデシュ首脳間合意で発表された「ベンガル湾産業成長地帯(BIG-B)」構想の中核プロジェクトの1つ。事業実施期間は2014年6月から2027年1月、総事業費は約1兆1,357億円を予定している。総事業費のうち、既に約3,420億円が国際協力機構(JICA)の円借款によって供与済みだ。2017年8月には住友商事と東芝エネルギーシステムズ、IHIによるコンソーシアムが契約を受注し、発電所に付随する港湾部分は住友商事の下、五洋建設が建設としゅんせつを進めている。
(注)1TEU:20フィートコンテナ換算。
(安藤裕二)
(バングラデシュ)
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