全国規模の非常事態宣言を発令、議会招集と選挙実施を停止

(マレーシア)

クアラルンプール発

2021年01月13日

マレーシア王宮は1月12日、憲法第150条に基づき、同日から非常事態宣言を発令する国王声明を発表した。非常事態宣言は8月1日まで、もしくは新型コロナウイルスの感染状況が落ち着くまでとしている。

軍隊出動や夜間外出禁止は実施せず

ムヒディン・ヤシン首相は同日会見を行い、非常事態宣言は新型コロナウイルス患者急増と医療現場の現状に鑑み、国民の安全を第一に考えた対応だとし、軍隊の出動や夜間外出禁止などは行わないと述べた。宣言に伴い、議会の招集と補欠選挙を含む全ての選挙の実施が停止される(国営ベルナマ通信1月12日)。宣言が発令されたことで、標準手順書(SOP)の違反に対する罰則を強化する可能性もあるといい、新型コロナウイルス収束に向けて、国民に感染予防への協力を強く求めた。

非常事態宣言発令の背景には、医療現場の限界点が近いことがある。国王声明によると、国内15カ所の病院における集中治療室(ICU)を除くベッド占有率は70%超となっている。また、ICUのベッド占有率は、クアラルンプール市内の病院2カ所では既に満床、全体でも70~80%超となっている。

なお、全国規模の非常事態宣言が発令されるのは、1969年の人種暴動事件以来となる。

外国投資家へ安定的な国家運営を強調

ムヒディン首相は会見の中で、政府は非常事態宣言下であっても安定的な国家運営を遂行し、経済活動を停止させず、ビジネスが通常どおり行える環境を保障すると強調した。また、外国投資家に対して、マレーシアはビジネスに開放的であり、引き続き経済の回復と再活性化に向けて注力する姿勢を示した。

(田中麻理)

(マレーシア)

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