公共港湾施設の賃貸、関心企業1社の場合は入札不要に
(ブラジル)
サンパウロ発
2020年09月18日
ブラジル政府は8月24日付の法律第14,047号を公布し、公共港湾施設の倉庫や鉄道、スペースなどの賃貸に係る民間企業の入札について、1社の応札の場合に限って入札手続きを不要にする法改正を行った。翌25日から施行した。
国家水運庁(ANTAQ)のガブリエラ・コスタ地域ユニット検査・調整課長によると、応札者の多くは港湾業務の諸機能(運送・荷役・保管など)を横断的に統括する「垂直統合型企業」と述べており、実態に即した法改正を行ったことが読み取れる。これまでは煩雑な契約手続きを伴い、関心企業を広く募る入札制度が条件となっていたため、契約まで約2年かかるケースが多かった。今回の法改正は、関心企業が1社となった場合に複雑な入札手続きを取りやめ、契約手続きを迅速に進めるというものだ。賃貸契約にかかる時間を約1年短縮する効果が期待できるという。
これを踏まえ、タルシーシオ・フレイタス・インフラ相は「効率性を高めて公共港湾の競争力を向上させることが必要だ」と述べている。ANTAQのデータによると、2019年のブラジルの水上貨物輸送に占める公共港湾のシェアは33.6%、民間港湾が66.4%となっており、インフラ相の問題意識は客観的な数値で裏付けられている。
今後の運用で注目すべき点は2つある。1点目は価格設定の問題だ。公共港湾の施設賃貸料は2013年の法律第12.815号により、公共サービスとして利用者が広く裨益(ひえき)できる価格設定を求めている。しかし、ブラジル港湾運営事業連盟(FENOP)のセルジオ・アキノ会長は、港湾業務の賃貸を公共サービスとして解釈することは不適切で、価格は自由に設定されるべきと主張した経緯がある。港湾運送に依存する業界〔ブラジルコーヒー輸出者評議会(Cecafé)など〕はコスト上昇を懸念して価格設定を安価に抑える必要性を下院議会や大統領府官房庁、経済省、インフラ省に訴えている。その後、ジャイール・ボルソナーロ大統領は8月24日の法案裁可に際して、公共サービスとして相応の価格設定は必要と結論付け、同法を施行した。2点目は、今回の法改正で企業の新規参入がどの程度妨げられるかだ。法務省の経済防衛管理理事会(CADE)は近年、港湾事業で「垂直統合型企業」が目立っており、企業の新規参入を妨げるものとして懸念を示していた。
(エルナニ・オダ、古木勇生)
(ブラジル)
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