ズーム・ティー、日タイEPA利用を経験、EPA活用による販路拡大に期待

(タイ)

アジア大洋州課

2020年09月15日

1995年に設立されたズーム・ティー外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(東京都港区)は哺乳瓶などのベビー用品を企画、製造、販売するメーカーだ。主力商品「ドクターベッタ哺乳びん外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」は、国内で熟練の職人が1本1本丁寧に手作りで生産している。本体部分にカーブがあり、飲み口部分が30度傾斜していることから、母乳授乳と同じく上体を起こした姿勢でミルクを飲むことができる。これにより、赤ちゃんの耳管にミルクが流れこみにくくなり中耳炎などになりにくい点、誤嚥(ごえん)を防げる点、授乳時に瓶の中に出てくる気泡がカーブに沿って逃げるため、空気の飲み込みを減らし、ゲップが軽減される点などの特徴が付加価値となっている。また、楽しみながら授乳できるよう、デザインにも1つ1つに願いを込めて生産している。こういった特徴が国内で評判を呼び込み、グッドデザイン賞やキッズデザイン賞も獲得している。

写真 「ドクターベッタ哺乳びん」(ズーム・ティー提供)

「ドクターベッタ哺乳びん」(ズーム・ティー提供)

写真 商品の使用例(ズーム・ティー提供)

商品の使用例(ズーム・ティー提供)

海外展開は、中国、タイ、インドネシアなどのアジア地域に加え、フランスやイタリアなどの欧州地域にも輸出の実績がある。ジェトロは8月19日、同社代表取締役の河合とも子氏、管理部の佐々木ひろみ氏に海外ビジネス展開と経済連携協定(EPA)の利用状況をヒアリングした。

同社はタイのディストリビューターからの要請を受け、2019年に初めてEPAの手続きを開始した。タイとの輸出入取引の際に使用できるEPAには、(1)日本・タイ経済連携協定、(2)日本ASEAN包括経済連携協定があるが、輸入者の要請により、(1)を活用し、日本商工会議所からの特定原産地証明書発給を受けた。

佐々木氏によると、それまでも輸出実績はあったが、EPA手続きは初めてだったこともあり、申請後の書類不備などで円滑な発給手続きが進まなかったという。具体的には、書類作成において、記載ルールの確認やHSコードの特定などが難航した。また、哺乳瓶の素材や柄が異なることから、商品ごとに原産品の判定を受けなければならない点など、想定以上に手続きの複雑さを感じたとのことだ。しかし、関係者の間で、EPA活用が売り上げ増大の追い風になることを期待する意識が芽生え、意欲的な手続きが行えたとも振り返る。申請時に不明な点が出た際には、日本商工会議所に問い合わせをし、問題点を一つずつ解決した。また、仕入れ素材の原産地を特定する証拠書類などを調達先のサプライヤーへ請求する際も、他部署社員の協力が得られ、社内横断的な体制が敷かれたとの実感もある。

同社は今後、ジェトロの中堅・中小企業向け海外展開支援サービス「新輸出大国コンソーシアム」を利用し、専門家によるハンズオン支援を受けながら、未開拓国への輸出にもチャレンジしていく方針だ。また、輸出国がEPAの対象であれば、EPA活用を自社の販路開拓やマーケティング活動の売りとし、今回の手続きで得た社内ノウハウを積極的に活用しながら、さらなる輸出強化を図っていくという。代表の河合氏は今後の事業展開について、「世界中の赤ちゃんにこだわりの安全安心な商品を届けたいという思いを胸に、子育てをする人々に寄り添える企業としての成長を目指したい。また海外展開に際しては、有効的なEPAの活用にも取り組んでいきたい」と抱負を語る。

(谷口晃希)

(タイ)

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