AGC、バイオ医薬品のモレキュラー・メディシンを買収

(イタリア)

ミラノ発

2020年08月06日

AGCは7月28日、グループ会社AGCバイオロジクスを通じて実施していたイタリアのバイオ医薬品会社モレキュラー・メディシン(MolMed)の買収に関して、株式公開買い付け期間が24日(現地時間)をもって終了したと発表した。

買収したMolMedはミラノに本拠を置き、がんや希少疾患のために遺伝子・細胞治療による研究・開発・製造活動を行っているバイオ医薬品企業で、AGCの発表によると、93.23%の株式を購入し、株式対価の支払いが7月31日に行われ、直ちにAGCグループの連結子会社になるとした。これにより、MolMedの上場は廃止される予定という。

AGCは2020年3月、新型コロナウイルス感染拡大によるロックダウン中に既にMolMedの主要株主(フィニンベスト/ベルルスコーニ家の同族企業)と株式公開買い付けの合意を得ていたが、イタリア政府は7月6日、ゴールデン・パワー法(2012年施行、2017年改正)による事前許可の取得をAGCに課していた。同法は、イタリアの国家安全保障やエネルギー、運輸、通信など特定分野の株式または資産の取得の取引に関して、政府が拒否権の行使や特別な条件の付加ができるイタリア独自の投資規制。欧州委員会が3月25日に、新型コロナウイルス感染拡大を受けてEU域外からの直接投資に関する「ガイダンスPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」を発表し、感染拡大の緊急事態下では、医療や医薬品関連分野への外国からの直接投資に関して警戒を強め、各加盟国で対策を取るべきとしたことから、イタリア政府はこの買収について、同法の対象に加える措置を取ったとみられる。

MolMedのリカルド・パルミサーノ社長は、6月9日付の「イルソーレ24ソーレ」紙によるインタビューで、「今回の買収は敵対的、投機的なものでは全くなく、全ての関係者が満足することのできる企業買収だ。われわれは、MolMedが戦略分野だと政府によって突然判断されたことに驚いている。ゴールデン・パワー法は投機について規定しているが、この買収にはいかなる投機的動機も存在しないため、心配していない」とコメントしていた。

イタリア政府がAGCに対して課した許可の条件は、(1)MolMedがAGCに何らかの知的財産を移転合意する場合(特に急性骨髄白血病と多発性骨髄腫)はイタリア政府への通知を義務付ける、(2)研究開発活動をイタリア国内で維持する、(3)研究開発に必要な人員の雇用レベルを維持する、(4)イタリアとEUの公的機関との現在の協力関係の継続を保証するの4点で、AGCは全条件を受け入れ、買収を完了させた。

(佐野さつき)

(イタリア)

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