ルーマニア、EU域外への丸太の輸出を2021年から10年間禁止へ

(ルーマニア)

ブカレスト発

2020年06月01日

ルーマニアで5月15日、「持続可能な森林管理に関する法律」(2020年57号)が官報で公表された。これにより、2021年以降10年間にわたって、EU域外への丸太の輸出が禁止される。

同法に違反した場合には、最大3年の懲役または10万レイ(約240万円、レイはレウの複数形、1レウ=約24円)の罰金が科される。加えて、森林資産の管理体制を確立すべく、林業分野の公的機関における「森林資産登録所」の設立などについても法律で規定された。

同法の原案は、社会民主党(PSD、現・野党)の元党首リビウ・ドラグネア氏(2019年5月に汚職により収監)が2019年に提案したものだ。当初案では、2020年以降の10年間、加工の有無にかかわらず、全ての木材の輸出を全面的に禁止するとしていた。この法案は2019年の欧州議会選挙の前に提案されたもので、森林資源の豊富なルーマニア中央部シビウ県を地盤とするクラウス・ヨハニス大統領をはじめ、国民自由党((PNL、現・与党)への攻撃材料となっていた。国際的な林業団体のフォーダクは、木材の輸出を禁止する場合、ルーマニアに約10億ユーロの経済的損失をもたらす、と警鐘を鳴らしていた。

一方、今回可決された法案は、輸出禁止の対象が縮小され、未加工の丸太だけに限定されている。2019年のルーマニア統計局のデータによれば、未加工の丸太の輸出額は2019年時点で約1,637万ユーロだが、ルーマニアの木材の総輸出量のわずか約0.02%にすぎず、経済的な損失は大きくないとみられる。一方、野党のルーマニア救出同盟(USR)と人民の運動党(PMP)は「今回の法案はルーマニアで深刻な社会問題となっている違法伐採の根本的な解決にはつながらない」と批判している。

(ミンドル・ユニアナ)

(ルーマニア)

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