トランプ米大統領、インフラ事業の迅速化を求める大統領令に署名、緊急事態宣言からの経済回復目的に

(米国)

ニューヨーク発

2020年06月08日

トランプ米国大統領は6月4日、運輸省など関連省庁に対して、インフラ事業を迅速化するよう指示する大統領令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに署名した。産業界は支持する一方、環境団体は必要な環境影響評価を形骸化させる懸念があると批判している。

トランプ大統領は大統領令の中で、新型コロナウイルスによる国家非常事態を受けた経済の減速に触れた上で、「時代遅れの規制と官僚的慣行がインフラ投資を妨害し、米国の建設業に従事する労働者を雇用から遠ざけ、米国民が世界レベルのインフラの恩恵を享受することを阻止してきた」と、今回の判断に至った経緯を説明している。

大統領令は具体的に、運輸省、陸軍工兵隊、国防総省、内務省、農務省に対して、緊急事態下で認められる権限などを利用して、国家環境政策法(NEPA)などの規制を緩和する方法を検討し、高速道路などの公共事業や国有地でのインフラ・エネルギー事業を加速するよう要請している。さらに、国家非常事態宣言の期間中、30日ごとに、実際に迅速化した事業に関する報告書を提出するよう求めている。

大統領令では、高速道路以外に具体的な分野の言及はないが、化石燃料関係のインフラ事業も含まれるとみられている。米国石油協会(API)は6月4日、「効率的な許認可手続きは新規雇用の創出と経済全体の産業のインフラ開発の推進に極めて重要だ」との声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを出した。全米鉱業協会(NMA)も同日、「許認可の賢い改革は、国内に豊富にある鉱物資源の利用増を支え、過去25年で倍増した鉱物の輸入依存を反転させられる。今こそ、インフラ、国家安全保障そして将来にわたる健全な経済に不可欠なサプライチェーンを再構築する時だ」と支持を表明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

他方、環境団体は、今回の大統領令が環境汚染につながる、と強い懸念を表明している。オバマ前政権で環境保護庁(EPA)長官を務めた、ジーナ・マッカーシー天然資源保護協議会(NRDC)会長兼最高経営責任者(CEO)は6月4日、声明で「非常事態の権限を悪用して、必要な環境評価を葬り去るのは非常識だ。これらの評価は法律で義務付けられたもので、われわれの健康や地域を害し得る産業から人々を守るものだ」と大統領令を批判外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

(磯部真一)

(米国)

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