モーロ法務・公安相辞任の反響

(ブラジル)

サンパウロ発

2020年04月28日

セルジオ・モーロ法務・公安相が4月24日に辞任した。同省所管の連邦警察庁長官の解任を強行したジャイール・ボルソナーロ大統領に反対して辞意を表明した。連邦警察庁長官は、国家に影響を与えるような汚職犯罪を捜査する連邦警察を監督するポスト。連邦政府にとっても重要で人選は慎重に行われる。

マウリシオ・ヴァレイショ前連邦警察庁長官は、モーロ前法務・公安相が推薦した人物だ。しかし2019年8月からボルソナーロ大統領は交代を求めており、モーロ前法務・公安相はこれに反対していた。4月24日付官報で同氏の解任が公示され、これに伴い法相の辞任も決定的となった。

24日に行われた会見では、モーロ前法務・公安相は、ヴァレイショ前連邦警察庁長官の解任人事に大統領が政治介入したことを批判。これに対しボルソナーロ大統領は、モーロ前法務・公安相からの情報共有が十分でなく、連邦警察に関する情報を自身が把握できない不満を述べている。

ボルソナーロ大統領とモーロ前法務・公安相の対立は、新型コロナ感染拡大でさらに悪化した。現在サンパウロ州などでは、生活に必要不可欠な商業・サービス以外の全ての施設を強制的に閉鎖する検疫措置(感染拡大防止措置)を実施しているが、同措置に従わない市民を連邦警察が警察所へ連行する事例が起きており、大統領はこれを批判。さらに、モーロ前法務・公安相がこれに関して特段発言していないことに対し大統領が批判を行う、といった応酬が繰り広げられていた。

モーロ氏は、法務・公安相に就任する以前に連邦判事を務めており、政財界の巨大汚職疑惑を追及した立役者で今でも国民から絶大な人気がある。2019年1月のボルソナーロ政権発足時には、経済政策で新自由主義を唱えるパウロ・ゲデス経済相と共に主要閣僚の1人として入閣した。

大統領は4月16日に保健相を解任したばかり。ボルソナーロ政権の支持基盤の1つはモーロ氏など汚職撲滅追及支持者であることから、今回のモーロ前法務・公安相の辞任で、政権の求心力低下を指摘する報道が目立っている。

今回の辞任劇を受けて、マーケットは大きく反応した。金融筋は、ゲデス経済相が政権を去る恐れを懸念しているからだ。対ドルレートは過去最低のレアル安となる1ドル5.70レアルを突破後、前日比2.33%レアル安の1ドル5.65レアルで引けた。サンパウロ証券取引所株価指数(IBOVESPA)も前日比5.45%減の7万5,330ポイントで取引を終了した。

(大久保敦)

(ブラジル)

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