新型コロナウイルス対策で国民ID活用強化を発表、統計庁

(フィリピン)

マニラ発

2020年04月24日

フィリピン統計庁(PSA)は4月14日、国民IDを活用した政府による各種サービス、国民への支援を強化すると発表した。新型コロナウイルスの国内感染状況を踏まえ、断続的な救援物資の配送、金融包摂(注)政策に基づいた金融支援、汚職削減、ビジネス環境の改善といった政策を実行する際に国民IDを活用することで、迅速なサービス提供が可能となるとした。

本発表の背景には、国民への実際のサービス提供に遅延が生じている点があるとみられる。フィリピン政府は、低所得層約1,800万世帯に1カ月当たり5,000~8,000ペソ(約1万500~1万6,800円、1ペソ=約2.1円)を給付する支援策を発表し、初回の支給を4月25日までに終了するとしていた。しかし、支給主体である内務自治省(DILG)による支給対象者の確認作業に時間がかかり、4月20日時点で支給が完了したのは全体の26%に当たる470万世帯にとどまる(4月21日付「インクワイアー」ほか地元各紙)。フィリピンの銀行口座保有率は2019年9月時点で25.1%(2019年9月30日記事参照)にすぎず、今回の給付金の対象となる低所得者はさらに銀行口座保有率が低いことから、送金での支給も難しい状況だ。

フィリピン政府は2018年8月、国民ID発行を規定する身分証明制度法を施行し、2019年に試験運用を開始。ドゥテルテ大統領の任期である2022年までには、全ての国民とフィリピンに在留する全外国人のID登録を完了するとしている。IDには氏名、生年月日、性別、出生地、血液型、住所、結婚歴、携帯電話番号、メールアドレス、フィリピン人か外国人のいずれか、といった情報が記載される。

(注)国民全員が、基本的な金融サービスを受けられること(ファイナンシャル・インクルージョン)。

(坂田和仁)

(フィリピン)

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