インドネシアのトラック輸送の最適化に貢献するスタートアップ
(インドネシア)
ジャカルタ発
2020年03月10日
世界銀行が発表した「物流パフォーマンス指標(2018年)」(注)で、インドネシアは160カ国のうち46番目に位置し、ASEAN諸国ではシンガポール(順位:7位)、タイ(32位)、ベトナム(39位)、マレーシア(41位)に次ぐ5番目。陸上輸送でトラックの輸送コストが高いことも指摘されている。荷主と運送会社とのマッチングシステム(Ritase.com)を提供するインドネシアのスタートアップ「PT. Digital Truk Indonesia」で事業開発担当副社長を務めている三上義弘氏に、同社のサービス内容などについてヒアリングを行った(2月26日)。
(問)貴社の概要と提供しているサービスについて。
(答)2018年1月に創業、従業員は現在約180人。2019年に三菱商事から出資を受け、私が出向している。今後、資金調達としてはシリーズBラウンドを行う予定。
物流にもさまざまな種類があるが、当社は荷主(製造メーカーなど)と運送会社をマッチングさせ、貨物を倉庫などに運ぶ幹線物流に特化している。現在、当社プラットフォームに登録している荷主は60社、運送会社は500社、トラックは1万5,000台。荷主向けに提供しているサービスは、(1)契約運送会社の配車手配・運行監視を行うクラウドシステム、(2)空き車両を活用した車両マッチングサービスの2種類。前者は、過去の実績(価格や輸送品質など)に応じて最適な運送会社を選択する機能を持っていて、荷主にシステム利用料を課金する仕組み。後者は、荷主がスポットで車両が必要な時にシステム上で依頼を出すと、登録運送会社・トラックの中から最適な車両を提供する仕組みで、当社が運賃の決済代行を行っている。当社のシステムでは、全ての業務(集荷時間、配送先への到着時間、荷下ろし作業時間など)について、ドライバーのスマートフォン上のアプリで管理可能。インドネシアでは、荷物を客先まで運んで、戻ってくるトラックの90%が帰りに何も荷物を運んでいない状態だと言われている。当社サービスはインドネシアのトラック輸送の効率化、渋滞の改善につながるものと考えている。
(問)今後の経営戦略は。
(答)当社のシステムに現在登録されている運送会社の規模はまちまちだが、当社プラットフォームは中小企業や個人経営の運送会社に役立つ仕組みと考えている。インドネシアの物流業界はサイロ化・多重下請け構造化しているといわれている中、下請けのトラック輸送を行う彼らがダイレクトに荷主とつながる当社サービスを利用することで、荷主・運送会社の双方にメリットが生まれるプラットフォームの提供を目指している。加えて、将来的には、非正規雇用のトラックドライバーがトラックを保有し、当社プラットフォームを通じて働ける環境を構築したいと考えている。
(注)各国の物流業者などを対象にアンケート調査を行い、税関などの諸手続きの効率性、貿易・交通に関するインフラ、競争力のある価格での出荷手配の容易さ、物流サービスの質、貨物の追跡能力、配達時間内に荷物が届けられるかの6つの項目で5段階評価を行ったもの。
(上野渉)
(インドネシア)
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