欧州空港業界、年間1億8,700万人の旅客減少を試算

(EU)

ブリュッセル発

2020年03月12日

国際空港評議会(ACI)欧州地域総会は3月10日、欧州での急速な新型コロナウイルスの感染拡大を背景に、欧州における空港の運営が本格的な危機に直面していると訴え、欧州委員会などによる支援を要請した外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。ACIがまとめた新型コロナウイルス感染拡大の影響に関する初期評価に基づく試算によると、2020年第1四半期の欧州地域における空港利用者(旅客)数は、通常想定(シナリオ)との比較で、6,700万人(13.5%)減少。この結果、第1四半期だけで13億2,000万ユーロ相当の航空関連事業(航空の他、商業事業など含む)収入の減少に繋がるとの見通しを示した。さらに2020年通年では1億8,700万人相当の旅客が減少し、通常想定で見込んでいた2.3%の増加から7.5%の減少に転じると予測する。

新型コロナウイルス問題は欧州航空産業にとって「前例のない規模の打撃」

ACIは、現時点ではイタリアの空港運営への影響が最も深刻としたが、こうした空港運営が難しい状況は急速に欧州全体にも拡大していると訴える。

ACIによれば、新型コロナウイルス感染拡大を阻止するため政府が直接・間接にヒトの移動に制限を課した結果、旅客航空需要が激減。こうした事態に対応するため、航空各社は大幅な減便等に踏み切ったという。こうした状況を踏まえて、新型コロナウイルス問題が欧州航空産業にとって「前例のない規模の打撃になりつつある」と総括。航空産業に対する各国政府と欧州委の支援が必要と明言した。

欧州委は空港発着枠利用義務の一時的緩和方針示す

こうした状況を踏まえて、欧州委は3月10日、通常の航空航路維持が難しくなっている欧州航空サービス産業に対する支援策を提案している外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。欧州委は、欧州及び世界の航空サービス産業を取り巻く情勢は日々悪化し、交通(の利用量)は今後の数週間でさらに減少すると見ている。

欧州委は航空サービス事業者の経営への圧迫を緩和する具体策として、先ず、発着枠の利用義務(注)をめぐるEU法に基づく規制を一時的に緩和する方針を明らかにした。航空会社は(EU法に準拠するために)殆ど旅客が搭乗していない航空路線の就航を発着枠維持のために続ける、いわゆる「ゴースト・フライト」と呼ばれる状況を回避でき、同時に非効率な温室効果ガス排出を抑止できるとしている。特に中小航空サービス事業者の経営面での支援になると期待している。欧州委は今後、EUの発着枠に関する規則の修正提案を早期に採択し、欧州議会及びEU理事会に迅速な承認を求めていくとしている。

(注)EUの発着枠に関する規則外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、特定空港での特定時間帯における離着陸を行う権利を航空サービス事業者に認める条件として、その割り当てられた空港発着枠の80%以上を利用する義務が課される上、その義務が履行できない場合、その後、権利を失うことが定められている。

(前田篤穂)

(EU)

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