中銀、主要政策金利を6.00%に引き下げ、新型コロナウイルスの影響は限定的

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2020年02月20日

ロシア中央銀行は2月10日、主要政策金利(1週間物入札レポ金利)を0.25ポイント引き下げ、6.00%としたと発表した。中銀理事会での主要政策金利の引き下げは12月16日以来の約2カ月ぶりで、2019年6月以降6度目。予想を上回るインフレの急速な鈍化や世界経済の減速リスクを背景に、さらなる引き下げの可能性も示唆している。

エリビラ・ナビウリナ中銀総裁は2月7日の理事会後の声明で、新型コロナウイルスの感染拡大による経済への影響について言及。世界の経済成長にリスクをもたらす新たな課題だが、いまだに多くの不確実性があり、その影響を語るには時期尚早と述べた。ウイルスをめぐる状況が悪化したり、米中貿易交渉の次段階で困難が生じたりした場合、金融・商品市場のボラティリティー(変動)の拡大、ロシアからの資本流出、新興市場の通貨への圧力などが生じ得るとした一方、これらによるインフレへの影響については「可能性はあるものの、目下、ロシア経済に顕著な影響は生じていない」との見解を述べた。

新型コロナウイルスによる経済への影響については、ロシアのエコノミストの間で話題となっている。中銀のクセニア・ユダエワ第1副総裁は2月13日、ロシア銀行協会主催の規制当局と信用融資機関代表者との年次会議の中で、「最大限に注意を払う必要がある」としながらも、この事態はまさに近年ロシアで構築されているマクロ経済システムのリスク耐性を問う試金石であり、世界の原油需要への影響は免れないが、深刻なものではないと指摘。「ロシア中銀のインフレ・ターゲット政策と金融政策には市場の信頼がある」と語り、状況の変化に対応可能という余裕をみせた(金融情報サイト「フィンマーケット・ルー」2月13日)。

他方、会計検査院のアレクセイ・クドリン院長はウイルス感染拡大による中国経済の落ち込みが原油需要、さらにはロシアの歳入にも影響をもたらし得ると指摘する一方、「十分な投資がなされていないロシア国内の潤沢なリソースを用いて経済成長を加速させることは不可能ではなく、ウイルスによる経済の下振れリスクはGDPの0.1~0.2%程度にとどめられる」との前向きな見方を示した(「イズベスチア」紙2月10日)。

ロシア中銀の金融政策について、理事会開催前に大手紙「イズベスチア」の取材を受けた大手行のアナリストの大部分は利下げを予測、その要因の1つにウイルス感染拡大の影響があることで一致していた。中堅行ソフコムバンクのミハイル・ワシリエフ首席アナリストは「感染拡大はインフレリスクを高める恐れがあり、中銀によるさらなる利下げは合理的ではない」と指摘。ズベルバンクのニコライ・ミンコ外貨金利市場戦略担当部長も「感染拡大は既にロシアの製品サービス需要減少という影響をもたらしているが、ルーブルの下落は十分に抑制されている」と評した(「イズベスチア」紙2月7日)。

(秋塲美恵子)

(ロシア)

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