抗議デモ再燃に懸念、3月に複数の主要イベント開催が予定

(チリ)

サンティアゴ発

2020年02月26日

2019年10月に始まった反政府デモの影響が徐々に沈静化しつつあるチリにおいて、3月から複数の要因により、再度の治安の悪化が懸念されている。

各種イベントの多い3月

フェミニスト団体によるデモ活動が見込まれる3月8日の国際女性デーを皮切りに、翌9日にはゼネスト、20日にはチリの先住民族であるマプチェ族によるデモ活動などが予定されている。加えて11日は、ピニェラ大統領が第2次政権を発足させてから2周年の記念日で、2019年10月以降の支持率低迷が要因となり、反対派による何らかの抗議活動が見込まれている。

迫る新憲法の国民投票

反政府デモにおける国民の要求に応えるかたちで、4月26日に新憲法制定の是非を問う国民投票の実施が予定されており、3月27日からは各会派、政党が新憲法制定について、それぞれの立場を表明する政見放送が開始される。現在、反対の立場を示しているのは、独立民主連合(UDI)、共和党(PR)、国民革新党(RN)の3党で、うち、国民革新党のみが賛成と反対の双方の立場を主張している。

民間調査会社のアクティバ・リサーチ(ACTIVA RESEARCH)が18歳以上の男女を対象に実施したアンケート結果によれば、新憲法制定に賛成を唱える割合、国民投票への参加意思を示す割合は、2019年の11月から2020年の1月にかけて、ともに低下していることが見て取れる(表参照)。デモの発生からある程度、時間が経過し、国民が冷静さを取り戻しつつあるがゆえの傾向とも受け取れるが、投票実施日に向けて今後議論が過熱していき、それに伴うデモ活動の発生などが危惧されている。

表 2020年4月に実施される国民投票に関する民間調査会社のアンケート結果

バケーションシーズンの終了

南半球に位置するチリでは、1、2月に夏のバケーションとして数週間の長期休暇を取得し、国内外の避暑地で過ごす層が多く、首都サンティアゴにおいて3月は、バケーション帰りの人々で街があふれかえるシーズンとして知られる。特に2020年は、デモで破壊された信号機のうち、いまだ100機以上が修復されていないという事情も相まって、市内の交通状況の悪化に拍車がかかる見通しだ。同時に、2019年のデモの「原動力」となった学生たちにとっても、3月はバケーションが明け、学校での授業が再開される時期で、ソーシャルメディアなどを通じた呼び掛けにより、学生主導のデモ活動が活発化することも懸念される。

(佐藤竣平)

(チリ)

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