世界経済の逆風を受け、2019・2020年のGDP成長率は大幅減速の見通し

(スロバキア)

ウィーン発

2019年12月23日

オーストリアのエルステ銀行は12月11日に発表した予測で、スロバキアの2019年のGDP成長率を2.3%、2020年を2.0%とし、9月に発表した前回予測(2019年2.5%、2020年2.3%)からそれぞれ下方修正した。2017年(3.0%)と2018年(4.0%)からみると、大幅な減速になる。世界経済の減速や米中貿易摩擦、英国のEU離脱(ブレグジット)問題などの外部環境の悪化が減速の要因となるほか、内燃機関からハイブリッドまたは電動エンジンへのシフトという自動車部門の構造変化も主要産業の自動車産業に影響を与え、輸出主導型産業に不利な影響を与えるとみている。2021年には産業も貿易も回復するとしており、成長率は2.5%となる見通しだ(表1参照)。

表1 2019~2021年の経済予測

賃金上昇圧力が続く

失業率は2018年の6.6%から2019年に5.8%に改善するが、経済の減速により2020年には5.9%と若干悪化する見通し。とはいえ、ここ数年の労働市場需給の逼迫(ひっぱく)感は依然として高く、賃金上昇圧力は相当強い。2019年の平均名目賃金上昇率は7.6%で、2020年には4.5%、2021年には5.0%と予測されている。

2月の議会選挙後、次期政権の経済への影響の予測は困難

2020年2月29日に予定されている議会選挙は、スロバキアにとって2020年の最も重要な政治イベントだ。中道左派の方向党-社会民主主義(Smer-SD)と、右派のスロバキア国民党(SNS)、ハンガリー人少数民族政党の架け橋(Most-Hid)からなる現在の連立政権の支持率は低下している(表2参照)。世論調査機関フォーカス(Focus)が12月2~9日に行った調査では、Smer-SDは引き続き19.6%と支持率でリードしているが、SNSは5.4%に落ち、Most-Hidは4.3%で議席獲得に必要な5%を下回っている。不確実性が高まっており、選挙後に同じ組み合わせの連立政権になる可能性は低いが、野党が小党分立しており、議席を獲得できない政党が増えれば、その分の議席がSmer-SDに回り、引き続き政権を握る可能性が残る。

表2 2016年選挙後の議席数と最近の世論調査結果

(エッカート・デアシュミット)

(スロバキア)

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