半数企業が何らかの対策を実施、移管先トップはベトナム、米中摩擦の日本企業への影響調査

(世界)

国際経済課

2019年12月27日

ジェトロは12月26日、「米中摩擦がもたらす我が国中堅・中小企業への影響」について調査した結果をまとめた(注)。日本の中堅・中小企業における米中貿易摩擦の影響と対応状況が明らかとなった。

2割に「マイナス(負)の影響」

保護貿易主義的な動きについて、自社ビジネスに「全体として負の影響がある」と指摘した企業の割合は2割と前年から増加した。一方、プラスの影響の割合は2%程度と横ばいだった。業種としては、特に輸送機器(部品を含む)、金属、一般機械などで負の影響が大きいとの回答結果が出た。

負の影響の内容では、「販売先の経済悪化」の回答が最多となった。「販売先の経済悪化」は、自社サプライチェーンに影響が及ばない場合にも波及し得るため、5割超の企業が販売減による負の影響を指摘した。また、関税引き上げにより、自社や調達先、または納入先の商品に、「価格競争力低下」など直接的な影響(図参照)を受ける企業も一定程度存在する。特に生産分業が進む電気機械では、他業種と比べて、より直接的な負の影響が大きいことも分かった。

図 米中貿易摩擦など保護貿易主義による負の影響の波及経路

負の影響を受ける企業のうち、約半数が何らかの対応策をとると回答した。具体的な対応策としては、「情報収集体制の強化」と「生産性向上・効率化によるコスト吸収努力」の回答率がそれぞれ約2割と高い。また、電気機械、輸送機器、繊維では、生産地の(一部)変更を実施済みの回答率が1割を超え、他業種に比べ対策の動きがうかがえる。地域別では、調査時点で何らかの対応を取っている割合として、東京が57.9%と突出する一方、他の地域でも4割程度の企業が既に対策を実施済みだった。

ベトナムなどへ、サプライチェーン再編の動き

保護貿易主義に対応したサプライチェーンの再編(予定を含む)では、生産地、調達先、販売先を(一部)移管・変更するケースが一定数、挙げられた。主な再編パターンとしては、中国から、ベトナムやタイなどASEANへ生産移管や調達先変更を行うケースが多くみられる。また販売先変更では、中国からベトナムのほか、中国内の他企業を挙げるケースもあり、顧客の動きを踏まえ新たな需要に対応する姿勢が見て取れる。

(注)本調査は、定量情報(1)と定性情報(2)に基づき取りまとめたもの。(1)は例年ジェトロが実施する「日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」の回答の一部を中間集計(速報値)としてまとめ、(2)は日本全国の中堅・中小企業122社に対しインタビューを行うことで、米中貿易摩擦がもたらす影響と企業の対策について傾向を分析した。(1)では、米中貿易摩擦をはじめとする「保護主義的な動き」全般による影響と対策を尋ねた。「保護主義的な動き」(保護貿易主義)には、2017年以降の、米国の対中制裁措置(通商法第301条)や鉄鋼・アルミニウムの関税引き上げ(通商拡大法第232条)、それに対する各国の対米報復関税措置、そのほかアンケート調査時点で発動中・または発動が検討されている措置を含む。

(伊尾木智子、吾郷伊都子)

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