第3四半期のGDP成長率、前期比0.4%を維持

(スペイン)

マドリード発

2019年11月11日

スペイン国家統計局(INE)の10月31日付速報によると、2019年第3四半期(7~9月)の実質GDP成長率は前期比が横ばいの0.4%となった(表参照)。前年同期比でも2.0%と、前期の水準を維持した。

表 需要項目別実質GDP成長率の推移(2019年10月31日発表、速報値)

スペインの景気は、2019年に入り減速感を強めていたが、足元では底堅さをみせている。これは、主に個人消費と設備投資の持ち直しによるもので、特に民間最終消費支出は10期ぶりに前期比で1%超えの1.1%増となった。2019年は、最低賃金(月額)が前年比22.3%増の900ユーロに引き上げられたほか(2018年12月27日記事参照)、労働協約による賃上げ率も好況期並みの2%超えとなっており、所得拡大と超低金利が消費を促進したというのが大方の見方だ。

政府最終消費支出も、公的セクターでの雇用増を背景に0.9%増となった。一方、建設投資は、年半ばからの住宅市場の急減速を受けて2.6%減となった。7~8月の住宅販売件数は、前年同期比8.5%減と5年ぶりにマイナスに転じている。

財・サービス輸出は0.8%減と4期ぶりにマイナスになった。うち財輸出は、7~8月の輸出額が10年ぶりにマイナスに転じた。また観光は、全体の4割近くを占める英国人とドイツ人の減少で、7~9月のインバウンド観光客数が10年ぶりに前年同期比で減少に転じている。

就業者数(フルタイム換算)の伸びは前年同期比1.8%増と、過去5年間の2.5%前後から大幅に鈍化しており、失業率も14%前後で高止まりしている。

ブレグジットやカタルーニャ州の混乱の影響を懸念

スペイン中央銀行も10月31日、秋季財政報告書を発表し、個人消費や設備投資の好調を理由に、第3四半期のGDP成長率を前期並みの0.4%とした。しかし中期的には、米中貿易戦争や英国の「合意なきEU離脱」が下振れリスクとなると指摘し、「合意なき離脱」が現実となった場合、輸出や観光で英国に大きく依存するスペインのGDPが、5年間で0.7%押し下げられると試算している。内政面では道筋が不透明な経済政策や、10月中旬のカタルーニャ独立派への有罪判決に端を発した大規模な抗議行動による影響を懸念材料としている。

なお秋に入り、スペイン中銀やBBVA銀行系シンクタンクなどが2019年の成長率予測を軒並み1.9~2.0%に下方修正している中、政府も10月15日に発表した「マクロ経済予測」で、2019年のGDP成長率見通しを0.1ポイント下方修正して2.1%とした。2020年についても0.1ポイント引き下げて1.8%とした。

(伊藤裕規子)

(スペイン)

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