ロシアの巨大企業から中企業へ、ウズベキスタン市場への関心広がる

(ウズベキスタン、ロシア)

タシケント発

2019年10月07日

社会・経済改革が続くウズベキスタン。中央アジア最大の人口を有し、他の中央アジア諸国と国境を接し地理的に重要な位置を占める。政治・経済的に関係の深いロシアはウズベキスタンの現状をどのように見ているのか。在モスクワの中央アジア専門家の1人で、ロシアの有力紙「独立新聞」で中央アジア地域を担当するビクトリア・パンフィロワ氏に聞いた(9月26日)。

(問)ミルジヨエフ大統領による経済改革への評価は。

(答)経済改革が速いスピードで進んでいる。改革は以前から準備されていたもので、当然ながら、前大統領の故イスラム・カリモフ氏の了解の下で検討されていた。カリモフ前大統領は保守的なイメージが強いが、ソ連崩壊から2000年代を通じて地域情勢が不安定な時代に国境線と国内の安定を維持し、現在に至るまで自動車、化学、繊維などの自国産業を守った。2000年代中ごろにカリモフ氏に長時間のインタビューをしたが、先進的な考えも持っていた。現時点で、ミルジヨエフ大統領が進める社会経済改革への支持者は多く、反対者は少ない。引き続き改革路線は続くだろう。

(問)経済開放を進めるウズベキスタンへのロシア企業のアプローチは。

(答)ロシアでウズベキスタン市場への関心は高まっている。しかし、ビジネス環境はまだ不安定な部分があると思われており、現時点で投資案件は首脳・政府間の合意で事業の安定性が得られる巨大企業の事業が中心。原子力発電所の建設計画や地下資源開発、エネルギー分野などだ。ウズベキスタン出身の資本家がロシアで積極的に投資の橋渡しをしている。

中小企業では、まずは体力が比較的ある中規模企業がウズベキスタンへのアプローチを開始している。ウズベキスタン経済は移行期にあり、今参入しなければ後のコストはもっと高くつくことをロシア企業はよく理解している。ただし、政府を含めロシア全体でウズベキスタン経済へのアプローチに大きな戦略を持っているわけではない。

(問)今後の課題、ロシアとの経済関係の発展の方向性について。

(答)個別分野の改革の成果は2~3年後に現れる。政権の大きな課題は若い世代の雇用創出と社会保障の充実だ。若年層の失業率を改善し、外貨規制緩和やインフレなどによる民衆の生活への影響を最小限に抑える必要がある。

ロシアとの経済関係は引き続き拡大する。ウズベキスタン農産品のロシア市場向け輸出手続きを簡略化する「グリーンコリドー」制度が稼働し、両国間の拡大経済連携協定なども検討されている。ウズベキスタン製の乗用車もロシア向け輸出が再開され、価格が安いことから一定の需要が見込まれる。ウズベキスタンからの労働力供給は(送金を受ける)ウズベキスタン経済と同様、ロシア経済にも重要な問題で、ロシアにとってウズベキスタンは引き続き重要な経済パートナーであり続ける。

写真 ビクトリア・パンフィロワ氏。1991年に週刊誌「アゴニョク」(「ともしび」の意)編集部入社。1993年以降、「独立新聞」で20年以上中央アジア地域を担当(ジェトロ撮影)

ビクトリア・パンフィロワ氏。1991年に週刊誌「アゴニョク」(「ともしび」の意)編集部入社。1993年以降、「独立新聞」で20年以上中央アジア地域を担当(ジェトロ撮影)

(高橋淳)

(ウズベキスタン、ロシア)

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