サービス貿易が中小企業の海外ビジネスを後押し、WTO「世界貿易報告書2019」

(世界)

国際経済課

2019年10月11日

WTOは10月10日、「世界貿易報告書(World Trade Report)2019(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」を公表し、サービス貿易が国際貿易の中で最も力強い要素となっており、今後数十年にわたってその役割が拡大すると強調した。

WTOによれば、サービス貿易は近年、財貿易を上回るペースで拡大を続けている。2011年から2018年まで、財貿易の伸び率が毎年約1%なのに対し、サービス貿易は毎年約3%となった。世界貿易額(財+サービス)に占めるサービス貿易額の比率は、1970年の9%から、現在は約20%にまで拡大し、2040年までには世界貿易額の3分の1に達する可能性がある。

さらにWTOは、サービス貿易が途上国・地域の中小企業を、貿易に積極的に参加させる一助となり得ると述べた。途上国・地域の中小企業が、創業から輸出までに要する期間をみると、サービス業は製造業に比べ比較的早く輸出を開始している(図参照)。1980年代と2000年代を比較すると、2000年代は輸出に至るまでの期間が短くなっており、WTOは、技術進歩とインターネット利用の拡大が、途上国・地域の中小企業の海外市場アクセスを加速させた可能性があると分析した。

図 中小企業が創業から輸出までに要する時間

今後のサービス貿易に影響を与える潮流としては、デジタル技術、人口動態、所得の増加、気候変動の4つが挙げられた。デジタル技術は、取引コストの削減や、プラットフォームを活用したサービス需要の拡大につながるほか、企業にとっては国境を越えた顧客の獲得をもたらし得る。またWTOは、サービス貿易に対する政策障壁は財貿易に比べて非常に複雑だとし、サービス貿易を経済成長や貧困削減の強力な原動力とするためには、グローバルな貿易協力の促進と、サービスを貿易政策の中心的要素とするための新しい道筋を見つける必要があると指摘した。

(柏瀬あすか)

(世界)

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