上院財務委、CPTPP批准承認法案可決、国内にはなお賛否も

(チリ)

サンティアゴ発

2019年09月02日

チリの上院財務委員会で8月20日、環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)の批准承認法案が可決された。同法案可決に時間を要した直前の上院外交委員会での審議(2019年8月21日記事参照)とは対照的に、わずか2週間で可決した。引き続き上院憲法・立法・司法・法規委員会で審議した後、上院本会議で投票が行われる。

反対の声も

この法案には反対を訴える団体もある。CPTPPに反対する組織、国会議員、市民で構成されるプラットフォームのチレ・メホール・シン・ティーエルシー(Chile Mejor sin TLC/「チリにFTAは不要」の意)は、上院財務委員会での法案可決に異議を唱えた。同団体は、既にチリと他のCPTPP参加国との2国間の自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)が発効済みで、チリにとってメリットが少ないことや、外資企業のさらなるチリ市場参入に伴い、外資企業に有利な条件での法改正、規制緩和への圧力が強まることなどを懸念している。同団体が7月にウェブ上で実施したアンケート結果によると、回答者の92.71%がCPTPPに反対した。回答者数は58万4,311人で、チリの人口の約3%に当たる。

中小企業へ向けた政府のアプローチ

一方、政府はCPTPP早期批准に向け働き掛けを行っている。8月22日付「エル・メルクリオ・デ・バルパライソ」紙によると、チリが現在交渉を進めている通商協定やCPTPPについて、中小企業向けに情報提供することなどを目的とした会合が8月21日に外務省で開かれた。サンティアゴ市を中心とする首都圏州とその周辺のコキンボ州、オヒギンス州、パルパライソ州の中小企業が参加した。会合ではCPTPPに関し、関税率や雇用の増加、中小企業に関する規定の存在などのポジティブな影響のほか、CPTPPの関税率の適用に不可欠な証明手続き、海外ビジネスに伴うコストなどの障壁、制限についても議論が行われた。

(佐藤竣平)

(チリ)

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