北京市、2019年の賃上げ基準ラインを8.0~8.5%に、上限ラインは設定せず

(中国)

北京発

2019年09月12日

北京市政府は9月2日、2019年の賃金ガイドラインを公表した。賃金上昇率の基準ラインを8.0~8.5%、下限ラインを3.5%(前年より0.5ポイント低下)と定めた。上限ラインについては、設定しなかった(表参照)。

表 北京市の賃金ガイドラインの推移

同ガイドラインでは、企業に対して自社の利益や人件費を考慮しつつ、労働市場における職種別賃金、業種別の人件費などを参照しながら、以下のように賃金を引き上げるよう求めている。なお、ガイドラインは企業に対して賃金のベースアップ基準を示すもので、強制力はないが、労使交渉の目安となる。

  1. 経営状況が正常で利益が伸びている企業は、自社の状況を考慮しつつ、基準ラインを参照しながら賃金上昇率を定めることができる。
  2. 利益が横ばい、もしくは減少している企業は、自社の経営状況に合わせ下限ラインを参考に賃金上昇率を定めることができる。経営が赤字で従業員への賃金支払いが困難な企業は、労働組合あるいは従業員代表との協議により、賃金を据え置くことができる。しかし、北京市の最低賃金基準を下回ってはならない。

なお今回、上限ラインを設定しなかったことについて、北京市人力資源・社会保障局の責任者は「上限ラインは、国有企業の従業員の賃上げ幅を合理的にコントロールするものだ」とした上で、国有企業の従業員の賃金設定メカニズムは今後、別の方式によって管理するため、上限ラインの設定は不要となった、と説明した。

また同ガイドラインでは、企業は合理的に企業内部の報酬体系を確定させ、不合理な所得分配格差を取り除き、積極的に賃金に関する集団協議を行うことのほか、賃金水準が低く賃金の上昇が緩やかな一般従業員、特にワーカーおよび技能工の賃金水準を高めることに力を注ぐべきだ、としている。

(注)北京市の正社員(全日制労働者)の最低賃金は2,200元(約3万3,000円、1元=約15円)となっている(2019年5月22日記事参照)。

(趙薇)

(中国)

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