江蘇省にも自由貿易試験区、行政手続きの迅速化など目指す

(中国)

上海発

2019年09月04日

中国国務院は8月26日、新たに6省・自治区に自由貿易試験区(以下、自貿区)を設立した(2019年8月28日記事参照)。その中で江蘇省にも、南京、蘇州、連雲港の3エリアからなる合計119.97平方キロメートルの中国(江蘇)自由貿易試験区(以下、江蘇自貿区)が設立された(各エリアの詳細は表参照)。

表 各エリアの面積と役割    

蘇州と連雲港の地元政府は、上海に初めて自貿区が設立された2013年から国務院へ自貿区の申請をそれぞれ行っており、今回ようやくその念願がかなった。

江蘇自貿区は世界トップレベルのビジネス環境の構築を目指している。例えば、2営業日以内に企業の設立、3営業日以内に不動産の登記取得、30営業日以内に工業建設に係る施工許可証の取得を可能にするなど、手続きの所要日数の短縮に向けた改革を進めるとしている。具体的な日数を挙げて「証照分離」(注)を掲げることで、他の自貿区との差別化を図っている。

また、江蘇省に集積する第二次産業を基礎に製造業のイノベーション発展を支持するとして、次世代ネットワーク国家工程センター、国家集積回路(IC)設計サービスイノベーションプラットフォーム、国家健康医療データセンター、第5世代移動通信システム(5G)のテスト商用都市の建設、国家級のコネクテッドカー(通信機能を備えた車)先進区を構築するとしている。環境問題にも対処すべく、積極的に環境保護基準を満たす機械設備の修理と再製造を行い、ハイエンド設備の再製造をするグリーンなテスト地区を模索していくとしている。

さらに、第三次産業への構造転換を果たすべく、現代サービス業の集積発展を推進し、山東省、雲南省の自貿区(山東省自貿区は2019年9月3日記事参照)と並び、健康・医療にも力を入れる。江蘇自貿区では、健康サービス発展の先行区を設置し、香港、マカオ、台湾のサービス提供者が同区内に独資企業の医療機構を設けることを認める。また、陽子線治療システムや手術ロボットなど大型イノベーション医療設備とイノベーション医薬の審査許可を加速させるとしており、こうした分野でも先行地点に立とうとする姿勢が見られる。

8月30日には南京江北地区で江蘇自貿区の看板の除幕式が行われ、江蘇省の娄勤倹書記、吴正隆省長が出席した。式の終了後には、上海市と江蘇省、浙江省の自貿区の間で「上海江蘇浙江自由貿易試験区連動発展戦略合作枠組み協議」が署名された。長江デルタ一体化発展が進む中、自貿区同士の連携も今後注目される。

(注)工商部門による企業の営業許可証発行と、行政部門による営業認可や承認手続きを分離させ、不要な手続きを削減すること。

(高橋大輔)

(中国)

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