欧州委、ベルギー税制優遇措置の利用企業を個別審査

(EU、ベルギー)

ブリュッセル発

2019年09月19日

欧州委員会は9月16日、ベルギーが一部の多国籍企業に適用していた「超過利益(Excess Profit)ルーリング制度」について、2005年から2014年にかけて同制度の適用を受けていた39社を対象に、各社に競合他社に対する不当な優位性が与えられたかどうか、個別の詳細審査を行うと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

超過利益ルーリング制度は、多国籍企業が、多国籍グループの一部であることの優位性の結果として得られる「超過利益」を算定し、事前ルーリングによって法人税からの控除を認めるもの。欧州委は2016年1月、同制度が多国籍企業のみを優遇する違法な国家援助に当たると判断し、ベルギー政府に対して同制度を利用した企業から過去の減税分を回収するよう求める決定を採択していた(2016年3月7日記事参照)。

ベルギー政府は欧州委の決定に応じつつも、EU司法裁判所(CJEU)に決定の取り消しを求める訴訟を提起。CJEUの一般裁判所(下級審に相当)は2019年2月14日、欧州委は超過利益ルーリング制度が国家援助に該当することを証明できなかったとし、決定を取り消す判決PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を下していた。欧州委は判決を不服として、上級審に相当する司法裁判所に控訴。今回発表の詳細審査は、上級審の審理と並行して実施される。

欧州委が開始する詳細審査では、個別の事前ルーリングを対象に国家援助ルールに抵触していないかを精査する。欧州委は、ルーリングにおいて、多国籍企業グループのシナジー効果や評判、顧客とサプライヤーのネットワーク、新規市場へのアクセスから得られる利益も控除対象として認め、利用企業の利益の約5割から最大9割程度までが控除対象となったと指摘。超過利益ルーリング制度により、税法が一部で誤って適用され、同制度を利用できない企業が差別されたと主張している。

欧州委は2013年から、個別の課税ルーリングに対する審査に着手。情報通信分野など、世界的大手企業を対象とするルクセンブルクやオランダ、アイルランドなどのルーリングの違法性も複数、指摘していた。

(村岡有)

(EU、ベルギー)

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