米国環境保護庁、原油・天然ガス部門から漏れるメタンガスの規制緩和

(米国)

米州課

2019年09月04日

米国環境保護庁(EPA)は828日、原油や天然ガスの掘削井、パイプライン、貯蔵設備などから漏出するメタンガスの規制を緩和するため、オバマ前政権時代のEPA2012年と2016年に策定した「新資源パフォーマンス基準(NSPS)」の改正案を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。EPAによると、規制緩和により、メタンガス漏出対策のために業界全体が投じてきた年間1,700万~1,900万ドルのコストが節約できるという。連邦官報公示後、産業界などから60日間パプリックコメントを求め、最終規則を制定する。

メタンガスには、二酸化炭素(CO2)の約25倍の温室効果があるとされ、米国内ではその約3割を石油・天然ガスの生産・移送・配送部門が排出している。このため、オバマ前政権は「気候変動対策に係る行動計画」の一環としてメタンガス排出規制を策定し、排出量を2025年までに2012年比で4045%減らすことを目標に掲げた(2015年8月28日記事参照)。

20168月の規制では、それまで規制の対象となっていなかった水圧破砕による原油・天然ガス生産井や貯蔵施設をメタンガス規制の対象とするとともに、同様に規制が免除されていた中小の油田・ガス田も対象に加えた。

トランプ政権下、EPAは排出基準の見直しのため、前政権が策定した規制の2年間の執行停止を20176月に宣言した。しかし、環境保護団体からの行政訴訟を受けて、連邦控訴裁判所は同年7月、EPAは既に公布済みの規則の執行停止権限は持たないと判断。このため、EPAは排出規制の新規定を検討してきた(2018年1月31日付地域・分析レポート参照)。

米エクソンモービルや英BPなど大手エネルギー会社は、環境保護を重視して既にメタンガスの漏出対策を進めている。しかし、小規模事業者からは、現行の排出規則は他の規制と重複し、順守のために追加コストが発生するとして、規制緩和を求める声が上がっていた。

(木村誠)

(米国)

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