2019年度第1四半期の成長率、前年同期比5.0%に急減速

(インド)

ニューデリー発

2019年09月13日

インド統計・計画実施省(MOSPI)は8月30日、2019年度第1四半期(4~6月)の実質GDP成長率(2011年基準)推計値を前年同期比5.0%と発表した。これは2013年以来6年ぶりの低水準で、5四半期連続で成長が鈍化した。

需要項目別に見ると、政府最終消費支出は前年同期比8.8%と伸長したが、ノンバンクの流動性が低下し、融資審査が厳格化したことなどを背景に、民間最終消費支出は3.1%、企業の設備投資などを表す総固定資本形成は4.0%と大きく減速した(表1参照)。また、米中貿易摩擦などによる世界経済の低迷のあおりを受け、輸出も5.7%と失速した。

表1 2019年度第1四半期の需要項目別GDP成長率(2011年基準)

産業部門別の粗付加価値(GVA)成長率を見ると、製造は、自動車部門の販売不振に伴う減産調整を主因に、前年同期比0.6%と急落したほか、農林水産は2.0%、建設は5.7%と、多くの項目で成長が鈍化した(表2参照)。インド自動車工業会(SIAM)のラジャン・ワドヘラ会長は「10月の祝祭シーズンの前に自動車部門の需要を喚起するためには、自動車に対する物品・サービス税(GST)を引き下げるべきだ」として、現行の28%から18%に減税する必要性を主張した(「エコノミック・タイムズ」紙9月5日)。また、農林水産部門が減速した理由の1つとして、少雨による農作物の生産減が挙げられる。インド気象局(IMD)のKJ・ラメシュ長官は「6月1日から7月31日までの間、モンスーンによる降雨量は平均を9%下回った」と述べた(「インディア・トゥデイ」紙8月1日)。

表2 2019年度第1四半期の産業部門別成長率(2011年基準)

インド政府は8月23日に経済のてこ入れを図る新しい景気刺激策を発表したばかりだが(2019年9月4日記事参照)、GDP発表と同じ日に、追加策として公営銀行を現行の10行から4行に再編する計画を明らかにした。政府が目標として掲げる「2024年までに5兆ドル経済の実現」を支援するため、再編で公営銀行の財務基盤を強化し、旺盛な資金需要に柔軟に対応できるようにする。また、銀行では合併時にシステムの統合を行うことが一般的なため、IT業界にとっては追い風となりそうだ。

(宇都宮秀夫)

(インド)

ビジネス短信 0b990f2db4e54cf5