太洋電機産業、日EU・EPA利用のためのサプライヤー情報をシステム化
(日本、EU、イタリア、ドイツ、フランス、スペイン)
欧州ロシアCIS課
2019年08月08日
設立から54年を迎えた太洋電機産業(広島県福山市)は、はんだ付けシステムや、はんだこて製品を主力商品として、国内外に販売している。海外向けが全体の売上高の約45%を占める。ただ、2019年に入って、この割合が中国などの需要減退により数ポイント低下した。欧州向け輸出はまだ輸出全体の5%程度だが、イタリアやフランス向け輸出で日EU経済連携協定(EPA)による関税の優遇待遇を既に受けている。はんだ付けの高効率化や低コスト化を志向して導入したはんだ付けシステム(ロボット)も現在、CEマークを取得中で、2019年内の欧州向け輸出を目指しているという。ジェトロは8月1日、同社の片岡義男・代表取締役社長、正木康司・常務取締役や各担当者に欧州輸出の取り組みや日EU・EPAの活用状況について聞いた。
欧州向け輸出はEU市場が統合される前から取り組んでいるが、現在はイタリア、ドイツ、フランス、スペインを中心に、ポルトガル、ポーランド、キプロス、ブルガリアなどに輸出している。はんだこては80ワット(W)が標準モデルで欧州向けにも輸出しているが、同社のオリジナル製品として、500Wの温度調整可能な超ハイパワーなはんだごても輸出している。中国製品を含めて競争が激しい中、他社製品は300Wまでのため、同社の強みとなっている。
2019年2月に発効した日EU・EPAについては、イタリアとフランス向け輸出で関税の減免を受けているという。イタリア向け製品の関税率はほぼ2.7%、フランス向けは0.8%、1.7%、2.7%で、発効から関税が即時撤廃となっており、両国向けの輸出金額からすると、インパクトはそれほど大きくないが、輸入者からの要請に先駆けて、日EU・EPAを積極的に利用するスタンスで準備してきた。原産性基準は、品目別原産地規則による関税分類変更基準で、インボイス上に申告文を記載し、自己申告しているという。
オーストラリアとのEPAで原産性の自己申告制度を経験
同社では、2015年10月ごろから、オーストラリア、タイ、フィリピンとの各EPAを利用するため、経済産業省の委託によるEPA相談デスクに相談したり、元大阪商工会議所の専門家を同社に招くなどして準備を行い、第三者証明制度に対応するための手順書を作っていたほか、品目別原産地規則での関税分類変更基準や付加価値基準での証明資料をエクセルで作成するなどシステム化を図ってきた。加えて、オーストラリアとのEPAでは当初、日本商工会議所に特定原産地証明書の発給依頼を申請していたが、1年程度の利用で担当レベルでも十分理解できたため、自己申告制度の利用に切り替えている。こうした経験も踏まえて、日EU・EPAの自己申告制度では円滑に利用できており、顧客である輸入者から特段の指摘も上がっていない。ただ、自己申告制度のみで、商工会議所には確認できないため、原産性の確認に少し不安な面もあるという。
他方、エクセル化したサプライヤー情報は毎月更新しており、仮に検認があったとしても、十分に対応できるよう保管資料を整備している。片岡社長は「欧州には工場が多くあることや、高齢化による人材不足で自動化による需要が今後増えるとの予測から、EPAも活用しながら、欧州向けの新たな輸出を増やしていきたい」と意欲を示している。
(田中晋)
(日本、EU、イタリア、ドイツ、フランス、スペイン)
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