アビィ首相、2019/2020年度予算は国民生活を重視

(エチオピア)

アディスアベバ発

2019年08月02日

エチオピア国民代表議会(下院)は2019/2020年度(2019年7月8日~2020年7月7日)初日の7月8日、前年度比11.5%増の3,869億5,497万ブル(約1兆4,704億円、1ブル=約3.8円)の当初予算を可決した。アビィ・アハメド首相は国会で、新年度に雇用促進と物価抑制、モノ不足の解消に取り組む意向を表明し、国民の生活重視の姿勢を打ち出した。しかし、現政権2度目となる予算編成もこれまでどおり、インフラ整備への配分が大きいもようだ。労働市場に参入する青年層をインフラ整備に巻き込めるかがカギを握る。

予算内訳は、経常支出が1,094億6,858万ブル(前年度比19.5%増。全体の34%は人件費)、資本支出が1,307億1,087万ブル(14.8%増)、州政府補助金が1,407億7,550万ブル(3.8%増)、持続可能な開発目標達成のための支出が60億ブル(増減なし)で、国内税収から予算総額の65%を賄う予定という。

詳細は開示されていないが、主要現地紙は、経済活動促進に933億ブルが割り当てられると報じている(「フォーチュン」紙7月14日)。都市開発と建設に566億ブル、水・エネルギー分野に175億ブル、農業・農村開発に145億ブル、運輸・通信に23億ブル、貿易・工業に21億ブル、鉱業に2億ブルとされ、引き続きインフラ整備の割合が大きい。

生活重視の取り組みで目新しいのは、雇用促進のため海外に計300万人の労働者を派遣する計画だ。既にアラブ首長国連邦(UAE)が5万人の受け入れを表明しているとされ、欧州諸国とも相談しているという。アビィ首相は7月1日に議会で、現在の失業者は1,100万人で、これに加えて毎年200万人が労働市場に参入する状況だと説明した。国内外で雇用を生むことが経済のみならず、社会の安定のためにも必要だ。

消費者物価指数は前年同月比で2桁増が続く。直近3カ月では、4月12.9%、5月12.6%、6月15.4%を記録している。地方情勢の不安定と農業生産の低迷、外貨不足による輸入物資の不足などから、食料品(19.8%)、非食料品(10.2%)ともに値上り傾向が鮮明だ。

モノ不足は幾つかの要因があり、国産品は地方の安定が食料増産や物流円滑化につながり、輸入品は原資となる外貨量がカギを握る。アビィ首相は議会での説明で、物品輸出の低迷を認める一方、前年度10カ月(2018年7月8日~2019年5月7日)までのサービス輸出は好調とし、海外直接投資や外国援助なども含めた資本流入額は124億ドル(前年同期比2割増)と説明した。政府は、外貨獲得能力を向上するために各分野における戦略策定に取り組む意向を示している。

(関隆夫)

(エチオピア)

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